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13.へんじがない。
帰宅したら、電気がついたままのリビングのソファの上に柴本が落ちていた。
フリーペーパー第1号をどうにか出してから3日が過ぎた夜だった。
いつもならば、ただいまと言えばおかえりと返ってくる筈なのに、返事がないから妙だと思った。
時間が一定ではない職種なので、当然、夜間に出掛けるときもある。けれどもそういう場合には事前にアプリにメッセージを入れる約束になっていたし、それが破られたことは今までほとんどなかった。
そもそも、出掛けたとするならばリビングの電気がつきっぱなしになっているのは、身の回りのことはきっちりやる性分の柴本にはありえない。
もしや、何かあったのでは!?
靴を三和土に放り出すように脱ぎ、急いで玄関を駆け上がる。早足でリビングに向かうと、ソファの上に赤茶の毛玉がうつぶせになっていた。
どうしたの!? 大丈夫!? 声を掛けながらゆさゆさ揺さぶると
「――んぁ?」
間の抜けた声。口元によだれがだらしなく垂れている辺り、どうやら寝落ちていただけだったらしい。
ああ、びっくりした!
何か重大な体調不良の類ではないと分かり、その場にどっと座り込むと、今度は柴本が目を擦りながらむっくり体を起こし
「ん、おかえり。なんだもうこんな時間か。あ、やべ! メシの準備まだだった!」
いいって、いいって! いつになくふらついた足取りで立ち上がろうとするのを、再びソファに座らせる。
今日はなんか適当に済まそう。非常用に買っておいたレトルトの牛丼とかカレーとか、あれにしよう。ご飯もパックのレンジでチンすれば――
「あ、コメなら炊けてるよ」
上出来じゃん! ちょっと待ってて。すぐ準備するから。お腹すいているでしょう? キッチンに向かうわたしの背中越しに
「なんか悪いな。仕事終わりだってのによ」
いつになく抑えめの声。そっちだって忙しかったんでしょと返しながら、賞味期限間近のレトルトパウチを探すべく、キッチンの戸棚へと向かった。
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