スムース・ハンド・ラップアップ

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 本来ならば必要のない人間を、絶滅寸前の生物や再発見した生物の捕獲に向かわせるのは、何か意図があってだ。そう、これはやつらの完全なる“仕込み”。最初からデキレースだったわけだ。僕はスケープゴートとして、一個の種を消し去った汚名をすべて被ることになるだろう。そうやって何人も、独り者の金無しを釣っていたわけだ。やつらは。僕ら金無しは、絶滅してしまっても誰も悲しまないだろうけど。 「なあ、相棒。もしも、もしもの話だけど、僕がこのサンプルといっしょに雲隠れしたら、どうする?」 「良心が痛むのですか?」 「あ、そうじゃなくて。いや、そうかもな。」 「人間として、当然の反応です。」 「ロボットが言うと、なんだかなあ。」 「ロボットにも人の心は分かります。」 「ああ、でも、人間は思ったよりも複雑な生き物なんだ。」 「生き物はすべて、複雑で素晴らしいです。」 「ああ、そうだね。ごめん。」 「この子も、複雑で、愛らしい生き物です。イクト、あなたとワタシの考えはいっしょのはず。大丈夫。ワタシはあなたを守ります。この子といっしょに。それが博士からの命令ですから。」 「え? いったいどういうことなんだ。スピィ。」
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