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突然の事に逃げるタイミングを失った俺が固まっていると、もう眼前に立っていた。
「お前、これが飛ばない原因が分かるのか!」
「へっ」
ペットボトルを突き出され、キラキラした目で聞かれる。反応出来ずにいると更に男が続けた。
「さっきこれじゃ飛ばないって言ってただろ!?」
答えずにいると顔を寄せられ、思わず押しのける。
……唾がかかってしまった。
「茜、もう安心だ! こいつがロケットを飛ばしてくれる!」
「やりましたね、アニキ!」
唾を拭っていると、置いてけぼりを食らっていた女も来てしまった。目の前でハイタッチをしている。
「いや、そんなこと言ってねぇし」
関わり合いになりたくなくて、目を合わせないように横に置いていた荷物を引っ掴んで逃げる。
「アニキ、行っちまうっすよ?」
背後から女が困惑した声と、男のこれ見よがしの溜息が聞こえた。
「おいおい、俺達の気を引きたいからって見栄を張ったのか?
仲間になりたいなら素直に言えばいいのにさ。全く、好きな子の気を引きたい小学生男子みたいだな。
……しょうがない。アイツはほっといて俺達で原因究明しようぜ」
「シャイなあんちくしょうなんっすね! それじゃしょうがないっす。アニキ、早くあっちで直すっす」
二人の的外れな考察に俺の足が止まる。
「そんなゴテゴテしたものを付けて飛ぶわけないだろ!」
馬鹿にされたのも、仲間になりたいと思われていたのも心外で俺は思わず指差し叫んでいた。
「なにぃ!?」
男の手に握られているペットボトルロケットには変な装飾や重そうな袋がぶら下がっていた。
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