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(何やってんだろ……)
俺はペットボトルロケットに付いていた無駄な装飾品を取りながら何度目かのため息をついた。あの後、目を輝かせた二人に引っ張られ、広場まで連れて来られて逃げ場はなかった。
勝手に自己紹介を始めた二人はアニキと茜と名乗った。
(アニキは名前じゃないだろ)
そう思ったがツッコむと長くなりそうだから声には出さない。今は早々にこれを飛ばして開放してもらうために無心で手を動かす。もう日も暮れ始めていた。
「俺の目に狂いはなかったな!」
「そうっすね、アニキ!」
「でも、このイカした翼が使えないなんてショックだぜ……」
「アニキ……そうだ! 代わりに格好良いペイントをするっす!」
「お! 茜はあったまいいな!」
「……なんだよこれ。ゴミを飛ばそうとしてたのか?」
こちらの気も知らず、呑気な会話をする二人に苛立ちが募り思わず口走った。俺の嫌味に憤慨したようにアニキが口を開く。
「失礼な、ゴミなんかじゃないぞ! それは紙吹雪だ! ロケットから飛ばして皆の視線を奪おうと思ってな!」
「私達の初仕事っす!」
「……仕事?」
「そうだ、俺達は盗賊団だからな!」
胸を張る二人に、最初に聞こえて来た変な歌を思い出した。
「偉大なる初仕事は派手に行こうと思ってな。上から突然紙吹雪が降ってきたらみんな驚くだろ!」
「街中の視線を奪うっす!」
盗賊というものの意味を激しく誤解していそうな二人だ。
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