星見英二と奇妙な二人

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 結局、計画は断念するがちゃんと飛ばしたいと二人に懇願された俺は発射準備をしていた。ペットボトルの状態をもう一度確信し、最後に水の量とゴム栓がしっかり嵌っているのを見て立ち上がる。 「これで空気を入れたら飛ぶと思うぞ」  空気を入れるように促すと、アニキは満面の笑みを浮かべた。 「ありがとうな! それにしてもお前詳しいなぁ。ロケット博士なのか?」 「そんなんじゃない。子供の頃に飛ばしたことがあるだけ……いいからやってみろよ」  アニキは「おう!」と元気に答えて空気を入れ出した。あっという間に空気が溜まったペットボトルは勢いよく水しぶきを上げ飛び出した。 「うおぉぉぉぉ!! 飛んだぁ!」 「た〜ま〜や~!」  一番星が輝き始めた空を切り裂くように、高く遠くへ飛んでいく。隣の二人の歓声が遠い。 (あぁ、そうだ俺は――)  あれは小学生の夏休みに参加した科学教室。その課題でペットボトルロケットを作って飛ばした。他の子はすぐに成功して遠くに飛んだのに、俺は二人みたいに失敗した。悔しくて水の量や角度、羽の形を変えて何回も試す俺と一緒に改良を手伝ってくれたのは講師で来ていた大学教授。何度も挑戦する俺に『諦めないのはすごい才能だ。研究者の素質があるぞ』と励ましてくれた。  そのおかげで、最後には参加者の中で一番遠くまで飛ばすことに成功したんだ。
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