星見英二と奇妙な二人

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(だから俺はあの人のいる大学で研究がしたいって思ったんだ。なんで忘れてたんだろう)  いつの間にか大学へ行くことだけにこだわってすっかり理由を忘れてしまっていた。落ちたロケットを取りに駆けて行く二人の背を見ていると、子供の頃の夢をもう少しだけ追いかけてみたくなった。  なぜなら俺は昔から諦めが悪い。 「……もう少し、頑張ってみよう」 「なんか言ったか?」 「いや、別に」  戻って来たアニキが首を傾げたが誤魔化した。不思議そうにしていたが、ニカッと笑うと指を突きつけてくる。 「よし決めた! お前は今日から俺達盗賊団の技術屋(メカニック)だ!」 「早速新規メンバー加入っすね!」    胸を張って自信満々に言い切る。断られるとはこれっぽっちも思っていない顔を見ると意地の悪い考えが浮かんだ。 「断る」 「そんなぁ!?」  俺がはっきり断るとこの世の終わりみたいな顔をするから思わず笑ってしまった。こんなに笑ったのは久しぶりだ。恨めしそうに見てくる二人になんとか笑いをおさめる。 「俺にもやりたいことがあるんだ。でも、気が向いたら手伝ってやるよ」 「約束だからな! そういやお前、名前なんていうんだ?」 「今更だな。星見英二だよ」 「よろしくな、英二!」 「よろしくっす!」  二人に両脇から腕をとられブンブン振り回されて握手をした。  これから計画を練り直すという二人とはここで別れる。しばらく歩いてから連絡先も知らないことに気づいて戻ろうかと思ったがやめた。  あの二人とは、その内また会える予感がある。 「その時までにちゃんと技術屋(メカニック)になっとかないとな」  気合を入れ直し家路を急いだ。
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