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二人の壮大な計画
「紙吹雪作戦は失敗しちゃったすっね」
英二と別れてすぐ、茜は腕に抱えたペットボトルロケットを見て少し気落ちして言った。
「何言ってるんだ? 初仕事はちゃんと成功したじゃないか」
アニキが茜の言葉に不思議そうに返すと、茜は目を瞬かせた。
「紙吹雪は飛ばせなかったっすよ?」
「俺達は英二から二つも盗んだだろ」
「あ、英二の視線を奪ったっすね! でも盗んだのは一つじゃないっす?」
少し考えこんでから茜はそう返した。それでももう一つが分からない様子の茜にアニキはやれやれと口を開く。
「バッカだな。俺達はアイツの視線と心を盗んでやったんだぜ。仲間になるっていうのはそういうことさ」
「一度に二つも奪ってたなんて! この調子で行けば私達が、世界征服を果たすのもあっという間っすね!」
笑顔の茜が大声で叫ぶとアニキがその口を慌てて塞いだ。周りに人気の無いのを確認して顔を寄せる。
「こら! 俺達の壮大な計画をそんな大声で言うな。誰かに聞かれちまったらどうするんだ」
「ごめんなさいっす」
気持ち小声にしながら二人は話す。
「それに、いくら俺達が一日一人仲間を増やしたとして一年で何人になるか分かるか?」
「一日に一人の心を奪えば、ええっと……一年で五百人の仲間が出来るっすね!」
指を折り考えた茜の言葉にアニキは深く頷く。
「そうだ。だが世界は広い、そんなスピードじゃ生きてるうちに全人類を手中になんて収められない」
「そんな!?」
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