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チャンスをくれないか、と仁紀さんは言った。
聞き間違いかと思ったけど、手のひらに感じる仁紀さんの背中は大きくてあったかくて、その言葉は夢じゃないのだと実感する。
込み上げてくる想いを堪えきれない。むしろチャンスを貰ったのは僕の方だ。そう伝えたいのに、想いが多すぎて言葉が出てこない。
ゆっくりと、仁紀さんが僕の方に向き直った。いや、今僕はきっと情けない顔をしている。とても見られたものじゃないだろう。
「こっち、見ないで欲しいんだけど……」
仁紀さんの両手が俯いた僕の顔を包み込み、上へと向かせる。
「見なきゃ、ハルにキス出来ないだろ」
仁紀さんの顔が近づいてくる。思わず目を閉じれば、懐かしく優しい感触を唇に覚えた。
何年振りのキスだろう。キスは仁紀さんとが初めてで、最後だった。仁紀さん以外のキスは知りたくなかったしそれで終われるならいい、と思っていた。
「仁紀さん、僕は」
温かい唇は、もうそれ以上の言葉は要らないと伝えてきた。二人の隙間を溶かすかのように、少しずつ熱を持ち始める。
会えなかった時間と、もどかしくすれ違っていたお互いの想い。それを埋めたいという気持ちが、二人の間に芽生えた。
角度を変えては何度も繋がる舌と舌。言葉がなくても触れ合えば分かると言わんばかりに絡まり合う。行き場を失った熱が、お互いの深いところでチリチリと燃え出す。するりとシャツの中に、仁紀さんの手が滑りこんできた。
「駄目だって、ちょっ、こんなところで」
「無理」
これ以上は、と脳内に警告音が鳴り響いていたけど、理性など無力だと言う事は僕自身も分かっていた。
駄目だなんて嘘だ。僕も無理だ。身体が、心が、欲しいと叫んでいる。欲しいと思ってしまったら、もう止められない。
さわさわと脇腹を掠めながら上がってくる。僕の大好きな、仁紀さんの長くて繊細な指先。僕の胸の弱いところを探り当てた。
「アッ、……そこ、嫌」
「嫌じゃないよな」
声は我慢しろな、と仁紀さんはさらに深く舌を差し込み、唇で僕の唇を塞いだ。仁紀さんの指先は、僕を翻弄し始める。
──う、んっ、
硬く尖った僕の胸の先端はますます強い快感を拾い、ガクガクと脚が震えた。もう壁に身体を預けて立っているのがやっとだ。
仁紀さんが僕を片腕で支えるように腰を抱くと、囁いた。
「ハル、キスだけでいった?」
「い、いってない……」
「へぇ?」
もう片方の手でジーンズのボタンを外され、濡れてしまった下着ごとずり下げられた。
「これは?」
なんでそんなに嬉しそうなんだよ。
「これ以上は……ここじゃ、ダメだって……」
少しの抵抗を試みてみたが、仁紀さんの手で大きく擦られた僕の下腹部は再び熱を取り戻し、あっという間にその言葉を覆した。
僕の身体は訴えている。
ダメじゃない、もっと欲しい。仁紀さんが。
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