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お土産
そして私たちは、御水舎で清め
常香炉に線香を奉納
「うみ先生、私、昔祖母たちとここに来ると『ほら、煙あびろ・煙あびろ』って頭に煙つけられてました」
「一般的にこの香炉の煙をあびると悪い所が良くなるって言い伝わっているのよ」
「え?じゃあ、私『頭悪いのなおれ』とか思われていたんですかね~?」
「さ~、それはみおさんのおばあ様に聞かないと…」
「あっ、それは、私がゆくゆく召した時にあちらで祖母を正座させて問いただしたいと思います」
笑いながら本堂に近付く
本堂の中では若いお坊さんから
住職さんまで揃ってお経をあげている
うみ先生と2人拝み終わり
角によけ本堂を見つめる
つい口から出てしまった
「うみ先生……やっぱり月影寺の顔面偏差値って半端無いんですね」
「プッ…やっぱりそう思っちゃった?」
もう、この場にはいられない
早く立ち去らないと吹き出してしまいそうで
階段をかけ下りた
「いや、もう、うみ先生!!吹き出すんですもん」
「いえ、みおさんが最初に顔面偏差値とか言い出すから!!」
「いや、けどやっぱり翠さんのように麗しい僧侶様はそうそういらっしゃいませんね」
「そうね、やっぱり月影寺は、特別なのよ。特別」
「特別か~なんか特別な場所とか特別な人とか響きがいいですよね~」
「そうね。響きだけじゃなくてそこに行くと自分自身が満たされるから特別だし、こだわっちゃうのかもしれないわね」
「ふ、深い…私も早くそんな人見付けたい!!」
「人だけなの?」
「はい!場所は、もう、うみ先生のお家が私にとって特別な場所ですよ!
お館様もいるし、はつえさんもいるし…うみ先生…」
「はい?」
「お土産買って帰りません?」
「あら、恋しくなっちゃった?」
「はい、おやつは皆で食べたくなりました」
「ここだと…亀九のどら焼きか隣の東むらさんかしら」
「じゃあ、混んで無い方で」
「東むらさんは、地元の方が買いに来るお店なのよ。浅草芸者のお姉さん達も手土産にするのよ」
「え、じゃあ、そこがいいです。地元の人に愛されるってのとお姉さん達も買いに来るってのにひかれました」
私達の数人前に小柄な可愛らしい男性が
どら焼きをバラで10個とようかんを購入していた
店主にあんこの炊き方を聞いたり
ようかんの固さ聞いたり
物凄く「あんこ」にこだわっている様子
自分の後ろに列が出来ているのがわかると
「大変失礼いたしました」と合掌しながら頭を下げて店を出て行った
「どこかの小坊主さんなんですかね?」
うみ先生に喋りかけた
「土地柄、そうかも知れないわね」
「しかし、好感が持てる子ですね。あんなに丁寧だと、今時のお嬢さん達と話が合わなそう…」
「うふふ、そうみたいね」
出て行った男の子を目で追うと
隣の亀九に並んでいる男性と合流した
その顔は、あんこの話を聞いている時よりキラキラしていて
まるでこの世には、2人しか居ないねって言うような空間を作り出していた
「あの彼、特別な場所に特別な人と来て大好きなあんこ所望するってなると、あんな顔になるんですね~」
私の顔までヘニャヘニャになった
うみ先生は
「みおさん!!帰るまでは、顔崩しちゃダメ!!帰ったらどーなってもいいから!今は、顔戻す!!これがこの作家の鉄則よ!!」
体育会系の先輩に無理な気合いを入れられた気分
ああ
早く帰りたい
ああ
早く離れでニヤニヤしたい
変な欲求が出ないように
帰りは、うみ先生と顔も合わせず頭の中で般若心経を唱えていたのは
内緒の話
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