春雷・春風

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午前中は、本当に仏花が飛ぶように売れた 自宅用も お参り用も 本当によく売れた 「やっぱり仏花の売れ方違いますね」 店舗データーをチェックしたりすると 都内じゃ一・二を争う位仏花が売れてる けど、この店舗の面白い所は、午後に花束が売れだす 「七五三副店長…なんで午後に花束が売れるんでしょうか?」 思わず聞いてみた 「ああ、それはお墓参り終わった人達が 故人と花を通してお話するみたいですよ?」 「お花を通して…ですか」 「ええ、故人の好きな花だったり 自宅に飾る花だったり加々見を通して対話しているみたい 実は、これ言い始めたの御子神店長なんですけどね どっかのおばあちゃんにお墓参り終わったら お花通してお話ししてみては、いかがてすか?って言ったのが始まりで そのおばあちゃん御子神店長気に入ってお孫さん嫁がせちゃったから 仏花婚?お気に入り婚? どっかのおばあちゃんじゃなくて 嫁のおばあちゃんだから自分のおばあちゃんにもなったんですよ」 笑いながら御子神店長の結婚の経緯を話してくれた 「何だか今の時代じゃあまり聞かない話ですけど 素敵ですね~」 人と人、いつ、どこで繋がるかわからない縁 繋がったら大切に大切に育てて行きたい そんなことを考えながらお昼休憩に入った そろそろ帰宅ラッシュが始まる頃 店舗の側に若い女性が覇気なくたたずんでいる もう、40分はあそこにいる 僕は気になってしょうがない…… 「葉山さん、そろそろ上がってください あとは、私達で大丈夫ですから」 七五三副店長と金髪の凜さんがピースをしてる 「ありがとうございます 一件だけさせてください」 そう言って覇気なくたたずむ女性に声をかけた 「こんにちは…あっ、もうこんばんはかな?」 女性は、ハッと目を見開いて僕を見た 「お顔の色が冴えないようですが大丈夫ですか? 貧血ですか? 僕もたまにするので…」 「あっ…大丈夫で…」 女性の目から大粒の涙がこぼれてきた 「す…すみません……」 「あっ、こんなのしか無くて…」 手の平サイズの吸水ペーパーを渡した 「すみま……せん」 大きく息を吸いながら涙を止めようとしてる 「泣きたい時は、泣いたらいいですよ 僕も泣きたい事ありましたから 泣いて泣いて泣いて助けてもらいました」 「くっ…」 「悲観的な時は、バラを眺めよって言葉があるそうですよ これからの時期色々な場所で咲きますから癒されてください」 そう言って僕は、店頭の花を見た 「菊乃!!」 息を切らした声で呼ばれた 「真実(まこと)……」 「探した!!いて良かった~」 「真実…わたしぃ…けっ、結婚ダメに」 「うん、聞いた。アイツ絶対バカだから!! 菊乃悪くないから」 「ううっ……赤ちゃん……いるって…」 「あんな浮気男捨てて良かったんだ 浮気するヤツは、結婚しても浮気するぞ 結婚前にわかって良かったな 俺は、読んで字のごとく 浮気なんて絶対しないけどな ほら、帰るぞ」 そう言って手を繋いで 僕に軽く会釈して帰って行った 「葉山さん?」 「…あっ、えっと、駅出た路面店舗って何だか凄い人生模様ですね」 ビックリした声を出してしまった 「今のは、久々スペシャルでしたよ? 話組み立てると婚約者が浮気して相手妊娠 婚約破棄って感じですね ついでにアピールぶっ込んでましたね」 七五三副店長がサラッと言う 「え…あれだけなのに七五三副店長わかっちゃうんですか!?」 僕は、尊敬の眼差しで見てしまう 「やだ~葉山さん!! 七五三副、そう言うの好きなんですよ」 「婚約破棄?」 「いや~ちゃいます!!ちゃいます!! 泥沼からのぉ~ド幸せ~ ちなみに七五三副漫画描いてるの知ってます?」 「あっ、ちょっと凜ちゃん!!言わないでよ!!」 七五三副店長が真っ赤になって止めてた 「漫画?」 「そうですよ~ 恋愛ものも 学園ものも 王道からマニア向けまで オールマイティー!! この前の日曜日、イベント行ったんですよね 自分の薄い本持って」 凜さんが明るい声で言うが 当の七五三副店長は、明るくなればなるほど湯あたりを起こしているタコのように赤くなってた 「あのぉ~?薄い本ってなんですか?」 わからなかったので聞いてみた 「うっそ!葉山さん!!マジで!? うっは~天然記念物!! 国宝級!!」 凜さんの鼻息荒い気がした 「り、凜さ… 「葉山さん!!上がってください!!お疲れ様でした!!」」 七五三副店長に話をぶった切ったぎられてしまった
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