春雷・春風

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俺は、今、社に帰る電車の中だ カバンの中には、薄い本 今日は、ガッチリ鞄を抱えてる これ、忘れたらヤバイよね~ 本物のヘンタイかと思われちゃうわ 流が何冊か「持っていけ」とチョイスした薄い本 まあ、純愛路線系な薄い本 いや、男同士なのに純愛っておかしいのか? いやもう男だから、女だからって時代じゃないのか? その人だから 瑞樹だから好きなんだよ うん って平日の昼間神奈川から東京に向かう電車の中で 思う話ではないよな …うん 「俺の煩悩、炭酸みたいにシュワシュワ出てるな……」 ああ、座禅でも振り払えない煩悩 せめて…せめて…日中は落ち着いてくれ 滝沢ジュニアよ 今日は、俺が芽生を迎えに行き自宅に着く 「「ただいま~」」 「芽生、鞄を置いて明日の仕度と手洗いうがいして夕飯作るぞ!!」 「わかったよ、パパ」 俺もスーツを着替える さて…困ったな 芽生に見つかるとまずいからな… そう思いベッド下に茶封筒事滑り込ませた 「よし、芽生!!今日は、何を作ろうか?」 「パパれいぞうこに なにがある? なにがつくれそう?」 冷蔵庫の中を見ながら 「そうだな…グラタン・ドリア・しょうが焼き・カツ丼・親子丼が出来るかな」 「えっ!?こまっちゃうな~ まよっちゃうな~」 芽生は、困っているのではなく嬉しい声を出していた 「うん!きょうは しょうがやきがいいな~」 「おっ、しょうが焼きか!! パパもガツンとしたものが食べたかった!!」 そう言って米を研ぎしょうが焼きのタレを作り出した 「芽生!!芽生は、キャベツのカット野菜を盛り付けて プチトマトを添えてくれ」 「わかったよ!!パパ!!」 そう言って三枚の皿にキャベツとプチトマトを盛る 「プチトマト1コあまった…」 「芽生の皿に乗せればいいんじゃないか?」 「パパ、ぼくは、お兄ちゃんのおさらが いいと思うよ」 「なんでだ?」 「まず、トマトは赤くてお兄ちゃんみたいにかわいいからです そして、きょうお兄ちゃんは、いつものばしょじゃなくて べつのお店におてつだいにいってつかれているからです トマトのりこちゃんはからだにいいんです」 「りこちゃん?」 「うん、おなじクラスのりこちゃんが トマトに入っているりこちゃんはからだにいいっていってた」 「りこちゃんがりこちゃん?」 さて……なんの事だ? う~ん……― ーピンポーンー 「只今帰りました」 「お兄ちゃん!!おかえりなさ~い」 芽生は、派手にお迎えに行った …羨ましいぞ、芽生 「ただいま、芽生くん」 そう言ってハグをした 「瑞樹 お帰り」 「宗吾さん! 只今帰りました」 そう言って見つめ合い二人で口角を上げた 「お兄ちゃん!!お兄ちゃんは、トマトのりこちゃんしってるよね」 瑞樹は、考え込んで答えた 「芽生くん、もしかしてリコピン…かな? りこちゃんがリコピンの話をしたんじゃない?」 「そうそう!りこちゃんがリコピンはからだにいいっていってたの だからお兄ちゃんきょうは、つかれているからトマト1コおおいでーす」 「ありがとう、芽生くん」 しかし、瑞樹は よくこんなに話が組み立てられるな… 俺は、芽生の話を半分位しか聞いてないような気がしてきた 「宗吾さん、もしかして気にしてます?リコピン」 「あ、ああ。あまり芽生の話聞いていないような気がしてきて」 「宗吾さん、得意・不得意ありますから 得意な方が不得意をカバーすればいいんですよ」 そう言われながら瑞樹の前を歩く その時、俺の背中に抱きついて来た 「どんな宗吾さんでも 大好きですから」 ああ…… 今日は、俺の滝沢君の我慢大会の日なんだろうか?
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