春雷・春風

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「パパ、しごとがんばってね いってらっしゃい」 ぼくは、おばあちゃんのお家の門のまえでパパを見おくったんだ 今日と明日 学校がお休みで パパとお兄ちゃん会社があって おばあちゃんのお家にお泊まりに来た 「おばあちゃ~ん あっ…えっと、おせわになります」 ぼくは、おばあちゃんにむかって頭を下げた 「あら、いやだ…芽生~ ご挨拶ちゃんと出来て… 本当に瑞樹君のおかげね」 フフフと笑いながらニッコリしてくれた 「おっ、芽生来たな」 憲吾おじさんとおばさんが玄関まで来てくれた 「おじさん、おばさん、おせわになります」 そう言ってまた頭を下げると 「も~芽生くん。そんなに改まって言わないで」 「そうだ、芽生。ここは芽生の家でもあるからな まあ、瑞樹君がしっかりしているんだな」 と、二人で顔を見合わせてニヤニヤしてる 「さ、早く中に入って 芽生君、朝ごはん食べた?」 おばさんが聞いてきた 「うん、パンとたまごとサラダ食べて来たよ」 「そう、じゃあ、オレンジジュース飲む? あーちゃんこれからご飯なの」 「わーありがとう。あーちゃん朝ごはんなの? いっしょにいていいの?」 「勿論。出来上がるまで一緒に遊んでてくれる?」 「うん」 ぼくは、そのままあーちゃんとテレビがあるお部屋であそんでた 「かーさん、アレ捨ててないよね?」 「捨ててないわよ ただどこに置いたのか… そろそろ断捨離もしないとかしら… けどねぇ~お父さんが使ってたとか 貴方と宗吾が使ってたとか思うと なかなか捨てられないのよね~」 母さんは、埃臭い納戸の角でため息をついている 「あった!母さん、あったよ」 「あら?そっちの方だったの!? 見当違いの所見てたわね、私」 「母さん表の支柱大丈夫だよね?」 「……多分、憲吾が見て判断して」 「わかった あ、母さん、芽生には内緒に」 「わかってるわよ」 そう、私と宗吾の鯉を泳がそうと探していた ようやく見つけ出した 支柱は、幸いにも壊れは無く今日明日なら使えるだろう そして私は芽生に内緒で支柱にくくりつける 見た時の芽生の喜ぶ顔が目に浮かぶ 瑞樹君が子育てに関わっているからか 芽生が持って生まれたモノなのか 芽生の情緒は感心する程安定し 年長者に可愛がられ、幼い子達からは好かれ 今時の子供とは、ちょっと違うだろう 今時の子供達は、ゲーム機やスマートフォン使って遊んだりしているだろうに 芽生は…お兄ちゃんと遊ぶって言ったりしてるからな やっぱり瑞樹君のおかげかな 私の顔がニヤニヤしているのが自分でもわかる 私はそっと縁側に近付き窓ガラスを叩く 皆、一斉に振り向く 「芽生、芽生のパパの鯉のぼりと おじさんのも泳がせたぞ」 そう声をかけると 部屋の中から小走りにやってきた 「どこ?」 芽生は、覗き込むが芽生には見えなかったらしい 「こっちだよ、ほら、芽生」 私は両手を広げ抱っこ出来るぞとアピールした 「え、あーちゃんのパパなのにいいの?」 遠慮なんだろう聞いて来た 「ああ、あーちゃん朝ごはん中だしな。 ほら、芽生おいで」 そう言うと芽生は、私にくっついて来た フワリ香る匂いは、瑞樹君の香りがした気がする 昔から瑞樹君が居たらこんな感じだったのかな また、自分で口角が上がるのがわかる 「あ~見えた~ パパとおじさんの鯉のぼり~」 芽生は、楽しげに見上げてる 私も一緒に見上げる 私と宗吾の鯉のぼりが風に揺られゆらゆら重なる 一時 宗吾(アイツ)どうなるかと思ったが 水を得た魚のように良い方へ変わった 宗吾(アイツ)の水は、漢字は違うが瑞樹君だからな 「おじさん、どうしたの?」 「ん?あ、ごめん。泳いでるな~って見てた そうだ!!芽生!!夜バーベキューするか?」 「え?バーベキュー?お家で出来るの?」 「ああ、庭があるしな よし、夜はバーベキューだ!」 「やったー!!」 こうして滝沢家の男子二人は バーベキューで食べる食材を考えながら 部屋に戻るのでした
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