もう一人のパティシエ

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もう一人のパティシエ

「なぁ~流~本当にダメかぁ?」 両手にさつまいもを乗せて 首を傾げるこの生き物 ……可愛い い、いやっ、違う!! 「そんなにしたいのか?」 「ほら、冬に皆でワイワイしたじゃないか なんだかアレ楽しかったんだよね~」 月影寺のご住職 焼き芋が楽しかったらしい 「いや、たださ、翠… 芋頂いたからって焼き芋大会する程無いし…」 そう言って両手のさつまいもを見る 「…だよね、あの時あれよあれよと言う間に芋が集まったよね わらしべ長者だったよ~」 …翠、わらしべ長者はどんどん良いものに替わる話だったぞ? 芋しか集まってないよな? まあ、俺の良いものは翠だけだけどなっ 「あ…翠、翠もスイーツ作るか?」 「え?スイーツ?」 「ああ、いや、実はさ、小森があんこでケーキを作りたいんだと」 「あんこで?ケーキ?」 「ああ、まあ、おはぎの大型版と思ってもらえばいいかな 思い付いたら作りたくて 思い付いた日から一番近い誕生日 実は、海さんでさ 海さんにバースデーあんこでケーキを贈りたいって」 「ああ、それで夏前から庫裡に籠ったりしてたの?」 「ああ、だからさ さつまいも使ったスイーツ 翠と俺の合作で海さんにプレゼントしない?」 「うわっ、楽しそう!! 海さんスイーツ好きだし 日頃お世話にもなっているし 流、僕と一緒にしてくれるかい?」 翠がにっこりしながら俺を見た 「ああ、何でもしてやるよ 手取り、足取り、腰も取って イヤッて言う程してやるよ」 そう言って翠の左頬を撫で上げ 左耳に手をかける 翠は、首まで真っ赤になりながら うつ向いてしまった 「あっ?あっ?翠~」 「も~流は、昼間っから何を…」 「ダメか?」 翠の必殺技をしてみた 「……ダメジャナイ……」 俺のも翠には効くらしい 俺は、翠を引き寄せ 翠を堪能する 「ちょ、流~そろそろスイーツ…」 「ん~スイーツ作りあげたら 翠をまた堪能していい?」 翠は、赤くなりながら頷いた 「流、スイーツは何を作るの?」 「さつまいものカステラと かりんとう作ってみない?」 「え!?かりんとうって作れるの!?」 「俺に出来ない事はない 俺は今や翠がいるから無敵だよ」 ニヤリ笑ってみせた 「も~流~そう言う所!!」 顔が真っ赤で可愛いな~ 二人で笑い、見つめ共同作業 かりんとうに絡めるのは ハニーキャラメル 蜂蜜は、瑞樹くんのお父さんになった人が養蜂した蜂蜜 瑞樹くんに頂いた時 宗吾が小声で 「蜂蜜は、お肌スベスベになる 垂らすと旨い」 と言ってて つい、いつ使うか悩んでて未開封 しかしまさか邪では使わず 海さんへのお・も・て・な・し で使う日が来るとは… つい、ニヤニヤしてしまう 「流?何をニヤニヤしているんだ?」 「あ~この蜂蜜を生で堪能したかったなと思っただけだ」 「じゃあ、全部使わず残して後でこっそり舐めるか?」 また、俺の考えの斜め上からの発言来ました 「翠も一緒に舐めるか? 瑞樹くんのお父さんが養蜂もしているらしくて頂き物だ」 「あ!頂いたね。何かに使ったかと思っていたよ それは、味わいたいね。 流、後でこっそりしようか」 …よし!言質取ったぞ! 「よし、翠!!ちょっとスピードあげるぞ」 翠さんが慎重にカステラの型に流し込むのを見ながら オーブンの温度、後片付け そしてかりんとうを揚げる ハニーキャラメルを絡ませる まるで流さんが分身の術が出来る 忍者のよう 「さあ、後は出来上がり待つだけ 翠、どうする? 味見は、今? それとも1日の終わりにゆっくり?」 口角を上げて聞いてみる 翠は、ようやく意味に気が付いたらしい 「…よ、夜 ゆっくり月見酒しながらはどうですか?」 「ああ、翠からのお誘いだからな 今晩ゆっくりゆっくり堪能する」 そう言って蜂蜜の瓶の中に入っているスプーンを持ち上げ タラタラと流れる蜂蜜を見せつける 「翠に似てるな」 「に、似てないよ!!」 「いや、トロトロになった翠から垂れるのが似てるぞ」 意地の悪い顔が覗き込む 「翠、今からそんな顔をするな 食うぞ」 そう言いながら 出来上がったハニーキャラメルかりんとうを口に入れた 「ん!!美味しい!!何か楽しい味がする」 「どれ!?」 一つ味見をすると 何だか水族館や遊園地っぽい味がする 楽しくて、美味しくて、時がこのまま止まればいいのに 二人だけの世界にして って思う味 さて…これをかけた翠からは どんな気持ちが湧くか楽しみになってきた 「ああ、旨いな。翠兄さん」 そう言って翠の顔を見ると 早くも色々緩んでる まずい、うん、実にまずい 「翠、海さんにバースデーカード書いて 伝票の宛名も 俺は、ラッピングして送ってくる」 シャキシャキ指示を出し 早く月見酒の時間になるように動き出した 煩悩だらけのスイーツになったが 海さん喜ぶよね? ま、次会った時 蜂蜜の話すればウハウハ喜んでくれるよな そう思いながら 宅配業者まで駆け抜けた
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