町内会防犯教室

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町内会防犯教室

「じゃあ、お忙しいでしょうが ご住職よろしくお願いします」 「はい、では週末に」 久々に聞く玉砂利の音が心地よい 山門をくぐり抜けると 階段で昔よく見た悪ガキと顔を合わせた 「あ…れ?町会長?」 「ああ、流。今、帰りか」 「ええ、翠の使いで出てました」 「そうか、お前ようやく落ち着いたようだな」 そう言うと微笑みたくなる 「師匠は、落ち着いていなかったのですか!?」 流の隣にいるちっちゃい坊主が聞いてきた 「ああ、子供の頃は やんちゃで有名人だったな あ、お前弁当に干物焼いて食った話もまだ廃れて無いはずだぞ」 懐かしい話を今あったように喋ってしまう 「師匠?お弁当は、箱の中に入れるから弁当じゃないのですか? 干物を焼いて食べるは…弁当なんですか? 大福をその場で作って食べたら露店ですかね?」 不思議な事を言い出す坊主を見つめてしまった 「あ~町会長 翠が預かってる小坊主なんだ あんこ好きすぎて何でも あんこに置き換えたりするんだ」 豪快に笑いながら小坊主の頭を ガシガシ撫でてる 「あんこ好きなんだ」 そう問うと 「はい、菅野くんを一番にするか あんこを一番にするか悩みます」 小坊主は、頬を赤らめながら真剣に悩んでる 「町会長、今日は何か用事でした?」 「ああ、町内会で防犯教室をするんだ 週末、法事が無いと聞いたから ご住職にも参加してもらおうと思って声をかけに来たんだ ご住職には、色良い返事頂いたから流も…小坊主君も来たらいい」 そう言って階段を降りた 「只今戻りました~ご住職様~」 小森が大きな声で翠を探す 「お帰りなさい。小森君も流もご苦労様でした 助かりました」 そう言って奥から出てきた 「翠、今、町会長とすれ違ったが…」 「ああ、町内会で防犯教室をするって 今、神社仏閣で仏像とかの盗難もあるからよかったら参加しないかとお誘い受けたんだよ」 そう言いながらお茶の支度をしてる 「へー防犯教室かぁ~」 チラシに目をやると 最初の1時間は、子供達に いかのおすしを教えるらしい 「防犯に、いかのおすし?」 茶をすすりながらチラシを読む なるほど 語呂合わせで覚えさせるのか 「翠は、これ読んだ?」 何気に聞いてみた 「いや、まだ 読もうとしたら流達が帰って来たから」 「…そうか 語呂合わせで防犯用語覚えるらしいぞ 翠、いかのおすしの いかは?」 「えっ………防犯の? いか?……いか…いか… !!!!」 何か思い付いた顔だ 「威嚇する!」 「……翠、悪い人に威嚇してどうする『いか』ないんだよ ついていかない」 ちょっと半笑いで伝えた 「続けるよ、『の』は?」 「の?…の、の…のっとる?」 「翠……翠は危険な事に首を突っ込み過ぎ」 「なんだか難しいな…」 「土曜日は、防犯教室行かなきゃだな」 「そうだね、けど、流 流は直ぐにこの言葉わかった?」 まじまじと俺を見てくる 「いや、俺も全くわからなかったよ」 翠が微笑んだ 「流は、なんて思ったの?」 問われたから耳元で伝えた 「いかがわしい 残り香が 大きくなって 吸い口 締め上げる」 「ちょっ…流!! なんでいやらしく言うの!?」 耳朶までマッカになった翠 久々見たな 「いや、なんとなく…な」 含みを持たせた言い方をし 翠を見つめた 「ちょっと…小森君も居るんだから 近いよ、流」 翠は、俺の攻めにあたふたしてて可愛いな 「大丈夫、小森本堂にお供え持って行かせたし アイツ帰って来る時は叫びながら来いって言ってあるから なぁ、だから…翠」 そう言って翠の顎を俺の方に クイッと持ち上げ顔を近付けた 「ご住職さま~師匠~ 終わりました~ あんこくださ~い」 そう言いながら襖がパシッと開く 「小森~遠くから叫んで来いよ」 「え~僕は遠くとは、言われてませんでした… あんこ無しですか?」 あ~こうなると翠が… 「小森君、ありがとうね 大丈夫だよ 流、言い方があるだろうに さぁ、小森君食べようか 今日は、最中に大福、饅頭もあるんだよ」 ほら、なっ 俺の翠は、甘いし可愛い 「うわぁ~あんこパラダイスですね~」 翠と小森見つめ合いながら楽しげに笑う 「ま、この空気大切だから 防犯教室行ってみるかね」 そう言いながら 小さなあんこ玉をひょいっと口に入れた
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