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ユーレイくん
ボールがネットを越えて左右に弾き返される。
バレーの経験は片手で数えるくらいで、ルールはあまりよく分からない。
審判の吹く笛の音と手の上げる方向を頼りに、怜は点数表を捲る。
球技大会でも怜は空気のような扱いだ。
十五点先取のルールで、怜のクラスは序盤かなり離されていたが、ミスをカバーしつつマッチ差まで追い上げた。
声援のほとんどは西澤を見に来た女子のものだ。コートの外をぐるりと囲うように並んでいる。
相手の男子チームは、バレー部が二人もいるので苦戦は必須だった。
試合が白熱すると、怜の仕事も忙しくなる。
場外に飛んでくるボールを拾うのも、見学者に与えられた仕事だ。
次は自チームのサーブの番。怜は足元に転がってきたボールを拾うと、次にサーブを打つ人に渡そうとした。
「わりぃ。さっき当たりそうだっただろ」
「え? あ、大丈夫……」
「ユーレイくんだから透けちゃうし当たんないか」
西澤は首元の汗を拭い、怜にそう茶化した。
授業前や休憩の終わる頃合いに、いつも「だるいな」と友達に駄弁っているのを耳にする。
でも不思議と授業中は起きていて……多分、先生に注意されるともっとだるいことになるから、だと思う。
だるい、面倒くさいと溢すわりに、隣の怜に長い足でちょっかいをかけてくる。
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