ユーレイくん

1/7
前へ
/66ページ
次へ

ユーレイくん

ボールがネットを越えて左右に弾き返される。 バレーの経験は片手で数えるくらいで、ルールはあまりよく分からない。 審判の吹く笛の音と手の上げる方向を頼りに、怜は点数表を捲る。 球技大会でも怜は空気のような扱いだ。 十五点先取のルールで、怜のクラスは序盤かなり離されていたが、ミスをカバーしつつマッチ差まで追い上げた。 声援のほとんどは西澤を見に来た女子のものだ。コートの外をぐるりと囲うように並んでいる。 相手の男子チームは、バレー部が二人もいるので苦戦は必須だった。 試合が白熱すると、怜の仕事も忙しくなる。 場外に飛んでくるボールを拾うのも、見学者に与えられた仕事だ。 次は自チームのサーブの番。怜は足元に転がってきたボールを拾うと、次にサーブを打つ人に渡そうとした。 「わりぃ。さっき当たりそうだっただろ」 「え? あ、大丈夫……」 「ユーレイくんだから透けちゃうし当たんないか」 西澤は首元の汗を拭い、怜にそう茶化した。 授業前や休憩の終わる頃合いに、いつも「だるいな」と友達に駄弁っているのを耳にする。 でも不思議と授業中は起きていて……多分、先生に注意されるともっとだるいことになるから、だと思う。 だるい、面倒くさいと溢すわりに、隣の怜に長い足でちょっかいをかけてくる。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

591人が本棚に入れています
本棚に追加