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「……やば。寝てた」
怜が声をかけても隣に座っても微動だにしなかった青年が、むくりと起き上がる。
口に入っているコッペパンをもごもごと急いで飲み込むと、「おはようございます」と挨拶をした。
「え……あ、はい。おはようございます」
「いきなり何なんですか?」という警戒心が、表情にありありと刻まれていて、怜は恥ずかしくなり赤面する。
改めて顔を見て、格好いい男の子だな、と、怜は再びコッペパンをかじりながら思った。
「ここ。保健室なんで、ご飯食べるところじゃないんですけど」
綺麗な形の眉を寄せて、青年は呑気に昼食をとる怜を非難する。
「す、すみません。でも、保健の先生には許可はもらっていて」
「え?」
酷い喘息持ちで、春先と体調が悪い日は保健室を借りていること。
話を聞き終えると、青年は怜に向かって頭を下げた。
「すみません。知らなくて。保健委員で先生が留守の間を任されたんですけど。そんなこと言ってなかったから」
「あー……いえいえ。僕のほうこそ起こして声をかければよかったですね」
理解があって優しそうな人でよかった。
怜は一安心する。一見健康体に見えるし、目に見えてハンデを負っているようでもないから、人によってはなかなか理解されにくい。
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