2 糖尿とかそういう事ではない

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2 糖尿とかそういう事ではない

「う~ん、なるほどなるほどぉ。」 今俺は少し都市部の病院に来ている。 妙な噂…と言うか、都市伝説じゃねーの?と笑い飛ばす気にはなれないような話を小耳に挟んでしまったからだ。 いやまさか。まさかな…。 そう思いながらネット検索をしてみると、何と該当の項目がヒットした。 『バース専門外来のある病院』 『バース検査費用は?』 …なるほど。 あるのか。そうか。 まさかとは思う。思うが、取り敢えず俺はモヤッとする事は放置出来ない体質なので、検査を受けに行く事にした。 親には…、もし結果が芳しくなければ…カミングアウトしよ。 まあ、取り越し苦労だろうけどな。 そう思いながら訪れ、問診を経て血液検査他をこなし、結果として告げられたのは。 「日比谷さん、貴方、ケーキですわ。」 というコトバだった。 ケーキ…ケーキな。俺は甘いモンはあんま好きじゃねえんですけどね、先生。 「本人の食の嗜好は関係無いんですよねェ。本人そのものが甘いって事らしいので(笑)」 いや(笑)、じゃねえから。 wwwだったら医師でも〆てた。 つまり、医師の話はこうだ。 人類の数パーセント、様々な理由で味覚障害を患う人間達の中に、フォークと呼ばれる者が現れるらしい。 そこ迄なら、まあそんな人間がいるんだなってだけの話だ。 問題はそのフォークという人間の捕食対象になる人間も存在するという事だった。 捕食対象になる、先天的に甘い血肉を持つ人間、それがケーキ。つまり、俺ね。 因みに糖尿とかとは別問題だ。 何故捕食されるのか。 それは味覚障害であるフォークにとって、ケーキだけが唯一、味覚を感じられる存在だからだ。 ケーキの血肉、体液、全てが極上の甘みを持ち、満たしてくれる。 ぶっちゃけカニバリズム。人殺しである。犯罪である。普通、味覚障害だからって人を食おうとは思わない。 だけど、どうやらケーキにはフォークをそうさせてしまう美味そうな匂いがするんだそうな。 ケーキである本人は全く自覚が無くても、フォーク側は出会った瞬間にわかるというから恐ろしいわ。 因みにケーキである人間達は、幼い頃に殺されて捕食されてる事が多くて、俺のようにガッチリ成長してる例は本当に、ほんっと~に稀なんだそうだ。マジかよ俺すげえじゃん…。 でもそのざっくりした説明を聞いた時、妙に納得した。 俺が幼い頃から、初めて会ったにも関わらず執拗に迫ってきていた連中のあの様子を。 向けられていた視線が少しずつ変化していった意味を。 ガキの頃は、完全に美味そうな食い物。 少し成長したら、悪戯でもして味見しながら食ってやろう。 高校に上がる前くらいからは、セックスで味わってから食ってやろう。 どうせ食うんだから、その前にちょっとくらい愉しんでから……。 そう考える連中も、多かったんだろう。 人間だもんな。捕食対象が美味そうなお年頃なら、食欲と性欲がセットになったりもするんだろうな。 そんでやっぱり変質者で間違いねえな。 (※個人の感想です。) そこ迄納得して、ふと思った事がある…。 「先生、でも俺、ホラ。結構脱ぐとガッチガチに筋肉ついてるから、もう固くて美味くないかも。ははっ」 と言ったら、医師は憐れむような目で言った。 「ん~、日比谷さんね。 残念だけど、そう言うのは関係ないんだよねェ。 君を美味しそうだと思うフォークの人らが寄ってくる訳だからねェ。」 「ぁ、そっスか…。」 全然関係なかった。 つかフォークの人って、そんなに少ないの? 俺めっちゃ会ってたのになあ…。
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