3. 兄の子

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☆ 「俺も授業始まるまでここにいようかな」 トイレから戻って宣言した、もっとも用を足そうにもなにも出なかったけれど。 「え?」 両親が口をそろえた。 「だって産後って大変なんでしょ? 玲さんのお父さんは仕事をしてるっていうなら、兄ちゃんだけより俺もいたら、ちょっとは役に立たね?」 「そんなこといったって、ご迷惑なんじゃ……」 母が心配そうにいうが、保晴さんが口を添えてくれる。 「うちは見ての通り部屋は余っているので、お泊りいただくのは問題ないですよ」 やった! 「でも、玲ちゃんもナーバスになっている頃よ? そこに弟はいえ他人がいるのって、落ち着かないかも──」 経験者の母が語る、マタニティーブルーにイレギュラーなことは起きてほしくないようだ。 「別に介護のようにつっききりで世話するわけじゃないじゃん、掃除とか洗濯くらいなら手伝える」 洗濯──玲さんの下着とか触れるじゃん、なんて下心は懸命に隠す。 そこへ兄が戻ってきた。 「はあ? 瑞基が残る?」 母たちは仕事があり無理だ、明日には必ず帰る、でも盆休みにはまた来るからと息巻いた。 三男坊は残念ながら部活があるから愛知に戻るしかない。高3の晴樹は春には大学だが、スポーツ推薦が決まっている。決まっているとはいえ、今後の各大会の成績の次第も選考の基準に入っているので、そうそう休んではいられないのだ。 「別に、いたところで──」 「なんでもします、ご主人様。お役に立ちます」 下手(したて)に手まで揉んでいうと、兄は微笑んだ。 「こき使うからな」 なんだかんだで弟思いの兄は言う。 「へい、がってんでい!」 言うと皆が笑ってくれる、俺の本心も知らずに──かわいい人のそばにいたいんだ。
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