208人が本棚に入れています
本棚に追加
☆
一階の掃除を終えて、二階に上がる。もっとも部屋は半分しか使っていない、使っていない部屋は掃除はしなくていいといわれた、つまり一階よりは面積が減る、ありがたい。
まずは保晴さんの部屋、それから兄と玲さんの部屋をノックする。
「失礼しまーす、お掃除でーす」
返事を待たずに開けてしまった、すぐに「あ」という玲さんの声がする。
こちらには横を向く形で置かれたベッド、その上に座り、玲さんは瑠唯くんを抱っこしていた。
玲さんが慌ててタオルケットを引き寄せ、胸元を隠すのが見えた。
「──あ、ごめんなさい」
授乳中だ。
「ううん、大丈夫」
声を聞きながらドアを閉めかける──そっか……授乳……。
「あ」
言ってドアを再度開けた。
「カーテン、閉めたほうがいいんじゃない?」
玲さんの向こうにある腰高の窓のカーテンは全開だった。窓はもうひとつ、足元側にベランダに出られる掃き出しの窓があるが、そちらはレースのカーテンが閉められている。
「え、あ、ううん、別に大丈夫、だけど……」
玲さんが戸惑いいうけれど、俺は構わず室内に入った。
「駄目だよ、向こうが断崖絶壁で絶対見えないっていうならまだしも」
玲さんを安心させるため、窓だけを見つめて進んだ。玲さんはがっつり俺を見ている、タオルケットを手繰り寄せるのがわかった。
窓の外は車が一台通れるほどの道と、その向こうは木々が生い茂っている、それは道を挟んだお向かいさんの庭木である。確かにこれだけ葉があれば、その敷地からもこの部屋は見えないだろう。
最初のコメントを投稿しよう!