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5. 兄の秘密
その日も使い捨てのモップで床掃除をしていた。
保晴さんの部屋を掃除していて気づく、本棚の一角に置かれた写真立てが増えている。
瑠唯くんの写真だ、すっかり孫愛が爆発しているらしい。十数枚並んでいるのは生まれた時から毎日撮って飾っているんだ。かわいいかわいい言ってたもんな、本当にかわいくて仕方ないんだろう。
アンティーク家具や雑貨を扱っている店舗を経営している保晴さんらしい、何とも古びた写真立てが並んでいる、つか店のもの使ってんのかな?
そろいなどではない、縁取りの模様も色もバラバラのものだ。生まれたばかりの頃からのものから見ていった。こうして並べるとやはり少しずつふっくらしていき、顔立ちがわずかに違ってくるのがはっきりとわかるもんだ、直接見ているとわからないけど。
と、棚の奥に隠すように伏せられた写真立てがあることに気づいた。兄と玲さんの結婚の写真の下に台のように置かれている、なぜだろう、高さを出すため?
気になって取り出した、あとできちんと戻せるよう、手前にあるものは順にどかしながら──別に悪さをしているつもりはないが、証拠は残さないようにと思った。
手にして驚いた、ウェディングドレス姿の玲さんと、タキシード姿の保晴さんだ。
一瞬見間違えかと思った、でもどう見ても玲さんの隣に立つのは兄ではない。
なんで。どうして。こんな写真が?
ふざけて撮った? いや撮る意味がわからない。
初老といっていい保晴さんは、今より白髪と皺が少ないようだ。
なにこれ? コスプレ?
今でも高校生に見えなくもない玲さんは、さらに若いというより幼く見える。
数年前といったところか。
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