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俺は写真を持って部屋を出た。1階に下りれば兄はダイニングで分厚い医学書を傍にパソコンを叩いて勉強をしているのが見える。
その脇に、すすす、と近づく。
「なあ、兄ちゃん、こんなの見つけちゃった」
そっと差し出した、しかし兄の反応は、俺が期待していたものではなかった。
「へえ、こんなのあったんだ」
嬉しそうにいって、写真を手にした。
「ああ、さすがに玲が幼い。そういや写真なんて見せてもらったことなかったなー。こんな写真はもっとあるのかな、今度見せてもらおう、玲、かわいいじゃん」
写真立てが被っている埃を拭いながら笑顔でいった。
「え……知ってんの?」
「なにが?」
「玲さんと保晴さんが結婚してるって……」
「ああ、知ってるよ、俺が出会った時はふたりは夫婦だったからな。玲が18の時に結婚したって聞いてる」
やっぱそうか……! マジ、子供じゃん! 犯罪だろ!
「じゃあ、じゃあ! 兄ちゃんと玲さんは仮面夫婦ってやつ!?」
「アホか、ちゃんと結婚したわ、お役所に書類出したわ」
「え、じゃあ、玲さんは重婚……」
それ、日本じゃ禁止されてるやつ。
「ああ、保晴さんとは離婚はしてるって。俺が住み始めてまもなく届けを出してたみたいだな、俺には教えてくれてなかったけど、玲の妊娠がわかってすぐに婚姻届を出しなさいって言ってくれた」
兄の幸せそうな笑顔に腹が立った──なんだ、本当にちゃんと結婚してたんだ。
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