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☆
はたして、12月22日、兄が帰ってくる。
両親はまだ仕事があるので、俺が名古屋駅まで車で迎えに行った。
駅舎の外、路駐できる場所で待っていると兄からどこだとメッセージが来た。
俺は車を降りてその脇に立ち、メッセージを返そうと画面を見る。
【タクシープールの──】
「ああ、いたいた」
懐かしい兄の声に笑顔になってそちらを見た。
まだ距離はある、でも兄が笑顔で手を振っているのが見えて、俺も振り返していた。そしてすぐに目に入る、隣に小柄な女性がいる、兄と手を繋いでいた。
「──へ?」
一瞬湧いたのは嫉妬だ、兄を盗られたと思った。大好きな兄に恋人が──いや、もちろん男で弟の俺に兄をどうこうはできないし、する気はない。そうじゃない、弟思いだった兄の心がよその女に向いたのが、どこか許せなかった。
勉強もできる兄が医学部にまでいったのに、勉強なんかしてねえじゃん、って思った。
だが近づくにつれ彼女の容姿がわかると、目を奪われた。
キラキラと輝く笑顔は、冬の冷気と相まって本当に雪のようにきれいだと思った。
かわいいな、しかもスタイルもいい、コートの上からでもわかる──って、いやでも待て、子供じゃね? いや子供って言い方は悪いが、高3の晴樹より年下じゃね? いや待て、どこで高校生をひっかけた!
「瑞基、ありがとな」
笑顔でいう兄を、下目遣いに睨んでしまった。
「……その人は……」
聞くと兄はにこりと微笑んだ。
「恋人、つか嫁」
嫁~~~!?
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