6. かわいいひと

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俺も、味見くらいしてみたい──布の上から尖ったものを唇で食むように口に含んだ、同時に左の乳首は指で挟む、硬い感触に体の奥底で血が逆流する感覚がした、指先に感じる冷たく濡れる感触は自分の唾液と勘違い出来て、股間が熱くなりすぐさま先走りしそうになる。 と、すぐに息を呑む気配がした、玲さんの体が動く。 「──あ」 やべえ、すぐさま離れたが。 憤怒の顔の玲さんが目に入った、だがそれはすぐに横へ流れた、玲さんの平手打ちが俺の左の頬に炸裂し、俺は完全に横を向いた。 「出て行って!」 怒鳴り声に謝る隙間さえ感じられず、俺は急いで部屋を後にした。 ……なにやってんの。俺。 ☆ 買い物から帰ると、兄はリビングのソファーで本を読んでいた、それは小説かなにかだろうか、文庫本だった。かたわらのベビーベッドで瑠唯くんがすやすやと眠っている。そして膝には玲さんがいた、兄の大腿を枕に横になっている。 「ただいま」 玄関でも言ったが再度声をかけると、玲さんは俺を無視するように寝返りを打って、腰までかかっていたタオルケットを顔まで引き寄せた。兄に背中側を向けていたが、今は顔を兄の腹に押し付けて小さくなる──あー、嫌われたわ、そうですよねぇ。 「瑞基」 兄は笑顔でいう、空いた手は愛おしそうに玲さんの髪を撫で続けながら。 「お前、母さんたちが来たら、一緒に帰れよ」 「──えっ」 大学が始まるまでといってあるのに──と、兄は音を立てて本を閉じた。 「お前、玲になにしたよ?」 あー……全部、話した? 話したね、この兄の怒り具合じゃ、寝顔覗かれたわ、くらいでは済ませていない──やべぇな。自分がしたこととはいえ。 「ん、ごめん、ちょっと、出来心で。ごめん、他意はない、本当」 嘘です、欲望が抑えきれませんでした、玲さんが俺のものになればいいのにって思いました。
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