6. かわいいひと

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「出来心ねえ……お前、その辺で女性が倒れてたら、これ幸いと襲い掛かるわけ?」 んなことしねえよ、そこまで節操なくないわ。 「んー、やっちゃうかも」 そう言わなければ、兄嫁に手を出したことがバレてしまうから、そう答える。 「どんだけ盛ってんだよ」 「すんません。玲さんごめん、本当に、ごめん。もうしない、絶対しない」 謝るが、玲さんは応えてくれない、完全に怒らせた、そりゃそうだ……。 「そんなやつを玲のそばには置いとくわけないだろ、必ず帰れよ」 「そんな……」 「四の五のいうなら即刻放り出すぞ」 笑顔でいう兄がむしろ怖かった、首をすくめて素直にわかったと答えた。 結局そうなるのか、まだ玲さんのそばにいたいのに。せめて姿くらい見ていたいのに。 ☆ もちろん、ふたりの怒りはそう簡単に解けなかった。まあそうだよな、俺だって彼女に手ぇ出されたら、徹底的にボコるわ。それをしないのは兄弟だからか、兄の余裕なのか。 それでも俺を警戒してか、ふたりは常に一緒にいるようになった、片時もといっていいくらいそばにいる。 俺のことがなくても仲睦まじいと見える姿を羨ましいと思いつつ、俺はせめて月末までいられるようにと家の手伝いは頑張った、必要だと思ってもらえるように──でも親もいい含められていたのだろう、盆休みの終わりに一緒に帰るわよといわれ、諦めて愛知に戻ることになる。 新横浜の駅まで、保晴さんが送ってくれる。その車内で。
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