1. 兄の帰郷

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その答えは、両親が帰宅した席で判明する。 「速水玲(はやみ・れい)、もう一緒に住んでて」 兄は笑顔で女性を紹介するが、両親も兄の恋人を訝しげに見ていた、優秀な兄が騙されていると思っているんだろう。 「一緒に……!」 母が悲鳴のような声を上げた。 「お腹には俺の子が」 それには居並ぶ全員が声を上げる。 「子供!」 「お前は東京で一体何をしてるんだ!」 「兄ちゃん見損なった! こんな子供に手を出すなんてありえねー!」 「俺も! 兄弟の縁切る!」 「す、すみません」 女性──玲さんが小さくなって頭を下げた。 「童顔でごめんなさい、こう見ても21歳です」 玲さんの言葉に皆冷静になった、そうか成人はしてて……でも、まだ21歳だ、若い、なのに結婚だ妊娠だなんて──俺より1歳年上、兄より1歳年下、だという。 「ごめんなさい、手順をいろいろ間違えてしまいまして」 「玲が気にすることない」 兄がいうが、母はわなわなと体を震わせて声を上げた。 「その……っ、どういうご関係で!」 詰問口調は、やはり優秀な兄を取られたくないんだろう。関係などとっくに聞いたのに相当動揺しているらしい。 玲さんが口を開きかけたけれど、それを兄が制した。 兄は両親の反対を押し切って上京した。両親はいつまでも兄をそばにおいておきたかったんだ、でも毎日愛知から東京まで通うのはしんどかったらしい、まあわかる、県内の俺だって面倒だって思うもん。 そんなんで親からのろくな援助もなく東京でのひとり暮らしで苦労していたところに、偶然玲さんのお父さんと出会い、部屋は余ってる、家賃は要らないからよかったら一緒に住まないかと誘ってくれたという。 そこで一緒に暮らすうちに恋に落ちたんだと。 「今日まで黙ってたのは俺だよ。電話越しに報告することでもないから一度会って直接話すって。妊娠がわかってすぐに入籍しようと思ったのに、それを止めたは玲。うちの親に報告してからじゃないと嫌だって」 いわれて玲さんは兄の隣で深々と頭を下げた、両親は顔を見合わせる。
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