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「結婚は父たっての希望でもあるので、いくらでも迷惑をかけてくれと言ってくれています。実は私は長く母ひとり子ひとりの家庭で育ちました。家族というものに憧れがあったんです。それを光輝さんが理解してくれてこんなにも早々に……ごめんなさい、せめて交際を始めた時にご挨拶に伺うべきでした、とても深く反省しています」
小さな体をさらに小さくして頭を下げる姿に、両親は再度顔を見合わせた。
ガキが優秀な兄をたぶらかし、妊娠を盾に結婚を迫ったと思っていたが、こうしてみる限り玲さんはとてもしっかりしていて、十分常識と教養を感じられた。
「玲は悪くねえよ」
兄は言って玲さんの頬を指の背で撫でた、その手は玲さんの首筋も撫でる。
そんな仕草からも兄は玲さんが大好きで、触れられて微笑む玲さんの優しい顔を見れば玲さんも兄が大好きなんだとわかる──羨ましいと思った。見つめ合うふたりは本当に幸せそうだ。
「俺にしてみれば親は関係ない」
「光輝!」
母が悲痛な声を上げた、兄を失いたくないと叫んでいる。
「俺が決めた相手に文句言うなって言ってんの。これ以上ケチつけるなら、本当に親子縁切るぞ」
──こういうところだ。兄は強くてかっこいい。晴樹が小学生の時いじめられていると訴えたが、両親は気のせいじゃないかなんて言い含めようとしていたのを、ふざけるなと相手のガキを呼び出して話を付けていた。兄に怖いものなんかないんだ。
両親も黙り込んだ、自慢の兄には冷たくされるのも辛いらしい。
「……まあ……新しい家族が増えるのも……悪く……ないか……」
父がぶつぶつと自分を納得させるようにいった。
「そうね……光輝の子どもなら、きっとかわいいでしょうし……」
母も渋々と頷く。
兄の結婚が承諾されたんだ。
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