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2. 兄の嫁
意外にも母と玲さんが打ち解けるのは早かった。玲さんの身の上話に完全に同情したのが一番かも。
到着した晩は出前の寿司をとった。それを食べながら母は聞き出そうという意図もないように、母子家庭の話を切り出すと、玲さんは素直にそれを語った。
物心がついたころには父はなく、母は玲さんが中学三年になって間もなく事故で亡くなったこと。
母方の祖父母は玲さんを引き取らないといい、天涯孤独となった玲さんを伯父さんが引き取ったということ。もっとも戸籍上では父親ではなく、便宜上『父』と呼んでいるらしい。
そして伯父さんの店を手伝いながら暮らしていた中、兄と出会ったこと。
苦労したわねと涙ながらにいい、いろんな人の助けがあってよかったと感動していた。
これからは私がお母さんになるから言ったが、兄がこちらには戻らないと言って、これまた不機嫌にはなっていたが、それよりは玲さんへの気遣いのほうが優先されていた。
24日、予約していたクリスマスケーキを取りに行くのも一緒に行こうと誘った、兄と三人で取りに行くという。
「あ、兄ちゃん、隼斗研究所の先生に会うと面倒だと思うから、一応言っておく」
「は?」
隼斗研究所は俺たち兄弟が通っていた近所の塾だ。
「ああ、そうなのよ! あなたがT大に入ったのが大層自慢みたいでね! ぜひ後輩たちに話をしてやってほしいとか、写真とインタビューが欲しいとか!」
そう、家族みんな、あそこの先生の餌食になっている。
「あー? 面倒くせー」
「だろ?」
「わかった、ありがとう。見かけたら逃げる」
それが最善だと思います。
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