3. 兄の子

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3. 兄の子

兄たちは愛知から戻るとすぐに入籍をした。結婚式はせずフォトウェディングというもので済ませ、アルバムにまとめられたものと、額に入った数枚の写真が送られてきた。 それはそれで和装なら白無垢から角隠しから何パターンもあり、ドレスも白やら青やらピンクやら何通りもあったので、母はいいわねえと喜んでいたけれど。 式は挙げてほしいとしつこく迫っていた、だが兄は「学生だから」の一言で黙らせている。元々学生結婚を反対していたのだ、ここで「でも」などとは言わせないんだ。 兄は仕事を始めたら改めて式を挙げるつもりらしい、なんといっても玲さんのお父さんが花嫁姿を見たくて仕方ないそうだ。 うちの親には冷たいが、玲さんのお父さんには気を遣って、優しく接しているのがわかる。 ☆ そして7月下旬、兄の子が生まれた。男の子で『瑠唯(るい)』と名付けられた。 写真は送られてくるが、直接会いたいからと両親は直近の土日に一泊二日で横浜へ行くことになった。 「俺も行きたい!」 玲さんに逢いたい、晴樹も一緒に行くと言い出す、それはたやすく叶う。 新幹線で新横浜へ、そこへは兄が車で迎えに来てくれた。その車は玲さんのお父さんのとこの社用車だという、確かに何ともシンプルなワンボックスカーだった。 車で向かった先は横浜でも一等地といわれる山手にある家だった、本当に金持ちなんだ。庭こそ狭いけど、かなり大きな洋館を模した家である。
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