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4 ブラブラのネング・タイム
なんにも考えてなかった。ただドクターの――俺が実の親父みたいに好きだった男の仇を討ちたかったんだろう。俺はそこらへんに転がってた鉄パイプを引っ掴むと、〈ニコニコ裁判所〉の事務所へ弾丸みたいに乗り込んでった。
「ジェフリー・F・アーミテイジを殺したやつは前に出ろ。俺と勝負しろッ!」
ネズミの巣みたいに薄汚い事務所では、身長1マイルはありそうな筋肉ダルマが4人、所在なげに釘バッドを弄んでた。俺の啖呵を聞くや否や、どいつも気色の悪いニヤニヤ笑いを浮かべ始めた。やつらのマヌケ面が俺の怒りに火を注いだ。
「どうした、ビビッてんのか?」
「チビ助、いますぐ失せろ。10秒だけ待ってやる」とサボテンの王。
10秒経った。「失せなかったらどうなるんだ?」
「チビ助、あのボケ老人がどうなったか見たんだろ。てめえも同じ目に遭いてえのかよ」
この台詞から、こいつが殺戮に関わったことは明白になった。俺は渾身の力で野郎のド頭へ鉄パイプを振り下ろした。
手応えはあった。筋肉ダルマの頭はオマンコみたいに凹んでた。やつは左右に二、三歩よろめいたあと、白目を剥いて大の字にぶっ倒れた。殺せた確信があった。
そのあとのことは覚えてない。次に意識を取り戻したのは、ジャンク屋の裏にうず高く積まれたクズ鉄置き場だった。
生きてるのが不思議なくらいに痛めつけられてた。起き上がることすらできなかった。折れてない骨があるのか、血の出てない部分があるのか、抜けてない歯があるのか疑問だった。
地べたを這いずり回ってた俺を見かねて、何人かの〈落ち穂拾い〉仲間が肩を貸してくれた。おまけに食料まで恵んでくれたやつもいた。
俺は連中に必ず借りは返すと約束し、ねぐらにどうにか落ち着いた。
まずは傷を癒す。もし運よく生き延びられれば、やるべきことをやる。
俺はいままで目的もなく生きてきた。だけどいまはちがう。やらなきゃなんないことができたんだ。
死にたくない。初めてそう思った。
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