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今日の作業を終えそれぞれが簡易的な部屋へと戻る。酒を飲む者、まずは寝る者、数人で集まって談笑をする者、様々な過ごし方をして明日に備える。僕はというと、当たり前のようにいつも一人だった。特に今日はやることが見つからずにいつも以上に暇を持て余していた。
カン、カン、カン
突然塀の方から何かが聞こえきた。その音がどんどんと大きくなるにつれ、僕の胸は落ち着かなくなっていく。何故だろう、ただの物音なのに。
ざわざわと木々が風で蠢くように揺れる胸の中。その胸を動かすこの音の原因を確認せずにはいられず、僕はその音の元を確認しに行くことにした。なぜこの音に惹かれるのか、心当たりはないけれど、それでも知りたかった。
カン、カン、カン
どこかに引っかかるこの音。どこかで聞いたような、やさしい……?音。
とはいえ暗くなった作業場に着の身着のままで行くのは危険だ。塀から放り投げられたUK-1の破片や暗くて見えなくなっているベルトコンベアに足を取られ転ぶ可能性がある。それに、一度だけ夜に煙草を吸うために外へ出た作業員が崩れたUK-1に巻き込まれ足を片方持っていかれたことがある。
念には念を入れ、僕はヘッドライトと一応の懐中電灯を持って外へ飛び出した。
「なんだコユキ逃げ出すのか〜?」
「お前は一生ここで雪拾いだよ」
また、笑い声。けれど今はそれどころじゃなかった。何か聞こえる。そんなのここに連れて来られてから初めてだ。もしかしたら誰か居るのかもしれない。焦る気持ちと足が合わずに転びそうになる。
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