雪兎くんの宣伝屋講座

8/24
前へ
/24ページ
次へ
 「岩本…」  先程教室にいた、岩本だった。  岩本大地17歳、クラスメート。成績は下から数えた方が早いが、柔道部所属でその実力には定評がある。本人もその肉体には自信があるらしく、体育の着換えとか何かにつけて見せつけてくる…。正直、ホモには目の毒だ。  「宣伝屋?みんな噂してた、謎の講座?お前、受けんの?」  矢継ぎ早に、質問を続けてくる。あの、とりあえず距離感近くないですか。パーソナルスペース、狂ってるんですか?やっぱり柔道部なので、寝技(意味深)とかで慣れてらっしゃるんですか…。  「…分かんね。相変わらず、謎だと思って。岩本、さっきの教室での事だけど…」  「ん?雪?めっちゃ入ってきたよな。ビックリした。なんか、一瞬兎が跳ねてるように見えなかった?みんな言ってんだけど」  やはり兎までは、他の者にも見えていたようだ。兎に刻まれた文字と、その後で出来た物体については誰の目にも映っていなかったものと信じたい。  「…そうだな。俺もビックリした。それじゃ、聞きたい事はそれだけ」  それだけ言うのが精一杯だった。なおも抱きついてくる彼を引き剥がし、教室に戻る。 …身体に触れてきた筋肉の感触が、脳裏から離れない。分かってて、敢えて当ててきたのかな。「あててんのよ」ってやつか。  あ、そう言えば…。例のパンフレット、勢いでそのまま持って来ちゃったな…。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加