一話

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一話

「……え、わかんねーんだけど。どこに惚れる要素あったわけ」  時は過ぎ、高校二年。購買で買ってきた焼きそばパン片手に、沢村が怪訝そうに訪ねてきた。その目は奇怪そうに細められている。 「そんな……、そんな強い佐藤さんが、好きでたまらないんだ……」 「そ、そうなんだ。強いっていうかユーモアがおありよな……」 「……そこも好き」 「そっか」  沢村は焼きそばパンを齧る。齧った際に上に乗った紅生姜を机上に落とす。 「やべっ」 彼は咀嚼しながらその紅生姜を一つ二つと摘み上げて口の中に運んだ。 「だから今年はチャンスなんだよ」 「え、なに?」  机上に垂れた紅生姜とソースの汁をティッシュで拭きながら沢村は尋ねる。 「同じにクラスになれたことさ。今まで小・中とクラスが別々で隠れて観察するしかなかった僕に、神がアタックせよといっているんだよ! 僕はやるぞ、なんとしてでも恋仲になってみせる!」 「おー、頑張れよ」  沢村は拭き終わった汚れ後が気になるのか、ペットボトルを開け、今度はティッシュに水を含ませて机上を綺麗にしていた。一回も僕と目が合っていない。誰に対しての応援なのだろう。寂しくなった。  こうして、沢村の協力? のもと、僕の『佐藤さん振り向いてアッタク作戦(SFA)』が始まった。
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