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【北方領土奪還ミッション】
この計画の発端は、10年前に遡る。
スーパーコンピューター『京』は、2010年に開発された。
その演算性能は2011年に世界一となり、翌年には同型のスーパーコンピューターが、理研和光研究所に設置され、無償開放された。
この時、大学でシステムエンジニアを目指していた、一郎はこのスーパーコンピューターを『未来予測』に活用してをしていた。
2014年2月ソチ五輪直後、ロシアがウクライナのクリミア半島に侵攻し、わずか2日でほぼ無血で占領したニュースが話題となった。
この出来事に触発されたて、東欧の歴史に興味を抱き、様々な条件設定を行い、その地域の未来予測とシュミレーションを行っていた。
そして、その都度その結果を、『AI樋口一郎』の名で、関係機関にレポートを出した。その結果とは、2014年30%だった予測は、年毎にその確率が上がり、2018年初頭の予測では、2022年2月北京五輪直後に、ロシアがウクライナに侵攻する確率は85%以上を示していた。
そして、2018年「スーパーコンピューター京」のシャットダウンが発表されると時を置かずして、公的特務機関から連絡を受けた。
それは、シャットダウンするスーパーコンピューターを分割し、その一部を活用して、2022年のロシアによるウクライナ侵攻と、その混乱に乗じて北方領土奪還の可能性をシュミレーションし、実行する計画であった。
そして、そのスーパーコンピューターの移設先は、2020年(プロジェクト活用の為)に廃校となる、歯舞学園に決定していた。そのプロジェクトの一員としてイチ(一郎)は参加することになった。
そのプロジェクトには、各方面のエキスパート30名が参加し、各自の担当分野のみが示され、その経歴も身分も互いに知ることはなかった。
参加者は全員愛称で呼ばれ、一郎は『イチ』と名乗り、人工知能開発と運用を担当し、そのチームのリーダーに任命された。人工知能によるシュミレーションは、全世界の関連情報を入力し、また各分野に必要な情報収集と活動を指令するプロジェクトの統括的なポジションだった。
そして、2020年8月その全員が廃校となった歯舞学園に集合した。学園は全員が寄宿出来るよう改装され、体育館がそのプロジェクトの指令室となり、『北方領土奪還作戦』の、ミッションが開始された。
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