8人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、朝輝くん。脅かさないでよ」
「えぇ!?脅かしたつもりはないのですが…」
今年24歳になる若手社員の朝輝 大河くんが両手にコーヒーを持ちながら立っていた。明るく驚くその姿は人当たりのいい印象を与えている。
黒く長めのウェーブがかかる髪型が特徴の男の子。癖毛の髪型が似合う男の子は顔立ちが整った人が多い気がする。朝輝くんも例に漏れずそんな感じだ。
持っていたコーヒーの片方を私のデスクに置いてくれる。私は「ありがとう」と言って努めて冷静に微笑んだ。
気配りもできるのはずるいと思うな。人はなんかしらマイナス面があるものだよ?朝輝くん、もしかして宇宙人?
心の中で茶目っ気を効かせたものの、そんな彼に私は最近困らされている。
「なにか満足していないことがあるのなら、ぜひ僕に聞かせてください!今晩飲みにでも行きましょう!」
「いやいや…なんで私なのよ。もっと若い子誘いなよ」
「えぇ〜」
とまぁ…こんな感じでなにかと私に絡んでくる。私が主体になっている今回の子供向け企画も、自ら志願して一緒に仕事するのを名乗り出てくれたくらい。
嬉しくはあるのだが、周りの目がかなり刺さる。主に私より若い女性社員の。
「…ところで用事があったんじゃないの?」
「あ、そうでした!子供向けに配るお菓子の件についてで、金平糖なんかどうかなと──」
鋭い目線に居た堪れなくなったので、仕事モードで朝輝くんと接する。この方が幾分か楽だ。
そもそも今業務中だしね。話し込んでる場合でも、友達の結婚の件で悶々としてる場合でもないから。
と、自分に言い聞かせながら彼の相談を聞いた。
最初のコメントを投稿しよう!