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凍てつく寒さが広がる雪国の冬。
私の住んでいた町は毎年大雪に見舞われる。正しく辺り一面、白銀の世界。
天を遮る建物は存在せず、夜は満天の星を望むことが出来る。見上げれば幾千幾万もの星々。
幼いながらに見た星空は、本当に手が届きそうなほど近くに見えた。めいっぱい手を伸ばしながら「いつか星を掴んでやる!」なんて意気込んでいたのも懐かしい。
そんなある夜、ちょうど今くらいの時期。5歳頃だっただろうか?私の地域で流星群が観測できた。
三大流星群の1つ、しぶんぎ座流星群。私は父と共に夜9時頃外に出た。
「すごい!綺麗!」
思わず息を飲んだのを今でも覚えている。
深く広がる濃い群青色の夜空に無数の閃光。流れては消え、消えては流れ。繰り返すその光の輝きは私の心を夢中にさせた。
星がたくさん降ってくるかのような光景に見惚れ、天に向けて短い手の平を開いたり閉じたり。
「お星様が落ちてきた時に掴めるようにするの!」
私を肩車する父がハハハッと笑った。
私の初めて見た流星群の記憶はここまで。
夜更け前の午後9時頃とはいえ私はまだ幼かった。気がつけば眠ってしまっていたらしく、起きたら自分の部屋だった。
「んぅ…」
寝ぼけ眼を擦りながら部屋から出て、なんとなく外に出ると…
「わぁぁ…」
眠気が一気に吹き飛んだ。
そこにあったのは積もった雪に反射する煌びやかな朝日。光を浴びてキラキラと舞う細氷。まさしくダイヤモンドダストそのもの。
目に映る光景は、まるで昨日の流星群が降り積もったかのような美しさだった。
その輝きはプリズムのように反射して虹色を織り交ぜる。天に輝く星々がそのまま大地に降り立った…。あまりの美しさに、私は本気でそう思ったんだ。
「お父さん、お母さん!星が降ってきた!たくさんたくさん!外に積もってる!」
家の中に戻り父と母を呼びながら、私は降り積もった輝きを掴んだり、投げたり、飛び込んだり。
めいっぱい、その感動を体に焼き付きた。
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