8人が本棚に入れています
本棚に追加
……………
………
…
そんなこんなで時は過ぎて2月14日。バレンタインの子供向け企画の本番の日。
あれから2人でいろいろ準備をした。子供たち向けにバレンタインプレゼントを用意したり、ドーム内の装飾をしたり。
夜遅くまで残ることもあった。それでも朝輝くんは文句一つ言わず、むしろ積極的に手伝ってくれた。
ふいに見せる笑顔は可愛らしく、だけどメリハリはあって仕事は真剣そのもの。約ひと月近く彼と仕事をして、私は徐々に惹かれていった。
…知らない方がよかったかもしれない。三十路の女が好きだの恋だの考えるのは年甲斐もない。
まさか6つも下の男の子に慕情を抱くなんて…。「忘れたい」と「素直になりたい」が頭の中でせめぎ合う毎日。
そんな日々でも天球はいつも通り星空を映し出す。映写された流るる流星に、私は幾度希ったことだろうか…。
………
…
「おはようございま……え、なにこれ」
そんな風に悶々としながら出社した私を迎えてくれたのは、大量のダンボール。オフィスの入口にたくさん積まれている。
「あっ!み、光星さん!」
「おはよう、朝輝くん。これなに?」
「あーいやえっと…じ、実は今日の企画で配る用の金平糖で…」
「え、これ全部!?」
朝輝くんに尋ねると、彼はバツが悪そうな表情をした。
「これ何キロあるの?」
「ご、500…」
「500kg!?」
本来の発注内容は5kgだったはず。
「すみません!発注量を間違ってしまって」
「私も確認したけど5kgだった気が…」
「あっ…と…け、桁間違えてたかもで」
「えぇ?」
発注ミスはよくある。だから気をつけてたはずなんだけど…。彼は珍しく歯切れが悪かった。
「…ごめん。私もきちんと確認しなかったかも」
「…あ、いや…謝らないでください」
朝輝くんは申し訳なさそうに目を伏せる。落ち込んでるみたいだな…。
「ほらほら、気にしない!」
「…あっ」
私はポンッと彼の肩を叩いて笑顔を向ける。
彼への気持ちを意識してしまうと、こういう軽いボディタッチもなんだか緊張する。
「こうなった時の対応も教えてあげるから!とりあえずもう始まるから適当に端っこ寄せておこう。企画の準備しないと!」
「は、はい!」
起きてしまったことは仕方ない。対応は後で考えるとして、今日の企画に集中しないと。
私たちはダンボールを運び出し、企画の準備へ取り掛かった。
最初のコメントを投稿しよう!