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『ドームに映るのはしぶんぎ座流星群。三大流星群の一つに数えられる有名な──』
私は手元の台本を読みながらマイクに声を流す。流れる流星に合わせて解説を奏でる。
プラネタリウムの営業が始まり、すぐに満席に。ドーム内はたくさんの子供たちとその家族。満員御礼だ。
「ママ!キラキラしてる!」
「ふふっ…そうね」
プラネタリウムは静かなものだが、今日だけはみんなでワイワイしながら見てほしい。そんな思いを込めて、歓談自由にしている。
静かに見る星空もいいけれど、私が見た星空は…お父さんとはしゃぎながら楽しく見たものだったから…。
『星は今日、皆さんのお手元に甘いお菓子として流れてきました──』
「パパ、これ可愛い!なんてお菓子?」
「金平糖だな、お星様みたいだろ?」
星に手は届かない。けれど星のようなお菓子なら手渡せる。私があの日見たキラキラをみんなの手元に…。
『流れ星は願いを叶えると言います、皆さん叶えたい願いは──』
台本を読みながらお客さんに目を配らせる。
親子の幸せそうな微笑み、星に一生懸命手を伸ばす子供たち、光る手元の金平糖。そのどれもが美しい輝きを放っていた。
…やっぱり私はこの仕事が大好きだ。
「光星さん、綺麗ですね…」
隣にいる朝輝くんに小声で話しかけられる。
「…うん、ありがとね。朝輝くん」
「…っ!い、いえ…」
ここまで成功できたのは手伝ってくれた朝輝くんのおかげだ。私はお客さんを邪魔しないように、小声で答えて微笑んだ。
幸せの時を紡ぎながら、プラネタリウムは流星を映し出していった。
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