夕景の依頼人

4/24
前へ
/262ページ
次へ
ペロちゃん、というのが、飼い犬だという事は、後になって知った。 「ああ、あの、迷子になったペット探しを依頼してきた女の子ね」 相変わらず、口元を綻ばせながら秋乃が言う。 「…はぁ。こんな事なら、あの時、引き受けなければ良かったわ…」 「無理、なのでしょうか…」 目の前の少女は、視線を床に落としながら尋ねる。 その声はか細く、よく見れば、体が小さく震えていた。 ―しまった…。 どんな頼み事であれ、年頃の女の子が、良く知りもしない大人の元へ相談しに来たのだ。 しかも、こんなに辺鄙な所へ、わざわざ足を運んでまで。
/262ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加