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「ロニー……さん?」
視線が合うと苦笑を浮かべるロニーがいる。
そこへ急にドアが開いた。
「二人とも、お待たせ!」
一体どれほどの時間が経ったのだろう。ソフィアが息を切らして満面の笑みでやって来たのだ。
そして二人を交互に見遣ると、
「何よ。待っていてくれなかったの?」
死体を横目に面白くなさそうに頬を膨らませた。
するとロニーが首を横に振る。
「仕方ありません。この無能がアンに全てを語ってしまうところだったのですから」
「あら、それなら良い仕事をしたわねロニー」
アンは訳が分からないまま、泣きそうな表情で聞き返す。
「だからロニーさん、さっきのは一体……」
静寂し張り詰めた空気の中、ソフィアはお構い無しに「傷口ってこうなるのねえ」なんてまじまじと観察している。
それを横目に酷く優しい声音と眼差しだった。
「一つずつ説明しなければなりません。お嬢様、お持ちして下さいました?」
「もちろん、はいアン。これが私たちからのサプライズプレゼントよ!」
手渡されたのは分厚く積み重なった紙の束。
これがなんだと言うのだと両手で受け取り、その一番上の文字を見て目を見開いた。
「これ、は……大好きだった大衆新聞の脇にあったあの物語。宝物だった。自分を重ねて泣いたり勇気付けられたり……」
ぱらぱらと捲ればあの日読みたかった続きがある。
また捲ればページはだいぶ飛び、自身の生い立ちから母や姉の死、身分を捨て労働者として働きながら復讐を待っていたこと。
そして今この状況すらが書き記してあるではないか。
「な、んで。私のこと……?」
だとしたら。
アンは急いでページを戻して脱力する。
何故なら自身も知らなかった姉の死ぬ前の姿があるのだから。
するとロニーは未だ申し訳なさそうに苦笑していたが、落ち着いた声で言った。
「お嬢様から聞きました。愛読者で居てくれたと」
「そうです、この著者の方に思いを馳せるまでに。ですが――」
「きちんとした、ご挨拶が遅れましたねアン。改めて私が貴女の宝物であるその〝可哀想な女の途方〟の著者ロナウドであり、今は貴女と同じ屋敷に仕える侍女のロニー。そして……」
アンの目線まで屈むと、手に持っていたナイフを返しながら続け様に。
「貴女の姉、メイジー・フランを自害にまで追いやるよう唆し――」
「うそ……」
妖艶な微笑みのまま。
「また、死したその女とメイジーと。同じ仕上げ学校に通っていた級友、ヴェロニカ・ウッドと申します」
「嘘よっ!!」
「お話しましょう、全てを……」
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