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ゆっくり引くと、中には手紙の束。
同じように記者になりたいと、父に宛てた手紙の返事であった。
読み返してみると。
「記者になりたいのであれば。お前の上司になる私のことは、お父様ではなくきちんとした呼び方をしなさい」、また別の手紙には「新聞というものに慣れるためにも、まずは小さなスペースをやろう。コラムでも、物語を連載するでも好きに使ってみなさい」など。
だから自身の生い立ちから中流階級層の子女が通う、仕上げ学校の出来事を多少脚色しながら掲載してきた。
書き終えると父に送り、「少しリアリティが足りないな」などとアドバイスを貰うのだ。
それが唯一繋がれた絆であり、愛であり、コミュニケーションだったのだが……。
「そんな些細な幸せを奪った誰かがいる」
涙している暇さえないように思えた。
父が死んだということは、これまでと同じような生活は送れない。何故なら送金も無くなるということだからだ。
ヴェロニカはすぐにその女学校を辞め、下流階級、労働者として働きながら、父を殺した犯人を探り始めるために町を出た。
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