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そう返ってくるのもまたいつも同じで。眼前に座る姉もまた〝可哀想な女〟なのだ。しかも自分とは違い、精巧に作られ完成された人形なのだ。
少女は憐れみに眉根を寄せ、足を引いた先に重心を置いた。
「本当に、そう思っています?」
だが長女は呆れたように、ちくり、と返す。
「毎回おかしなことを聞くのね。眠たくなるわ」
「自らが生き方を望んで何が悪いというのです?」
「それだから……。あなたが食べるもの、寝ているベッド、そのドレス、そんな何不自由のない生活で、これ以上何を望むというの? 世の中には生活に困り、もっと自由のない者もいるの。領民が聞いたら嘆くわよ」
何も貴女だけが可哀想なわけではないのだから、と。
(始まった、全く笑わせるわ。お姉様こそ一度平民の格好で会話に聞き耳でも立ててみたら? コランバインの広がる可愛らしい考え方。それが彼らにとっていかに鬱陶しいか……)
そんな勝気な性格で、常に自分の思う自由を夢描く妹と、くたびれた家の中に見合わないほどの優美な所作で、カップを口に運ぶ隅々まで貴族令嬢な姉。
「お姉様、人の自由など比べるものではありませんよ?」
「そんなことより、足元を見てご覧なさい、大きく広げて。あまつさえ片足に重心を傾けるだなんて論外だわ。それに天井を向いて首元を晒し、腕組みするとは何です?」
ちらり、とこちらに目をやったご立派な姉に、在り方というものを注意される。
しかしこんな屋敷の中では無意味なこと、と短く息を言葉を吐き捨てた。
「誰が見てるというのです? 客人など招かず、寄り付かないこんな牢獄に」
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