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「何てことをっ……お母様がお聞きになったらどうするの!」
「その時はまた、気が済むまでヒステリックに泣き喚かせて差し上げたら?」
二人は一歩も引かず、互いの瞳から静かに火花を散らしている。
以前はこの姉妹も仲が良かったのだが、少女が年頃になった辺りから、こうして衝突ばかりを繰り返すようになった。
フレーバーティーと。たいした甘みもない地味な焼き菓子が、申し訳程度に並ぶ冷え切ったティータイムの風景で、この家の困窮さが伺えた。
ここはフラン男爵家の別邸、つまりは離れに位置するゲストハウスだった建物。
目先の本邸は、大きくこだわりのある様式で華奢な細工が施されてあるが、シンプルなここへは家長である少女たちの父により追いやられ、使用人は極最小限に押さえられている。
そのため行き届かないことがあるのは当然に育った。
何せ少女曰くここは牢獄なのだから。
「アンバー、言葉遣いには気をつけなさい。レデイとしての自覚はないの? お父様にお叱りを受けるわよ」
またもやいつもの小言に少女、アンバー・フランは、いつまでも白けた表情を浮かべいている。
(お父様、お父様って。私がお叱りとやらを受けたところなど見たことがあるっていうの?)
そもそも少女が家を出たい理由はこの不気味な家族、特に父親にある。
フラン男爵家は上流階級、貴族といっても五等爵では下位の田舎貴族。
原因の父親の領地経営はおざなりで、曽祖父の功績で与えられた土地は年々切り崩し売られ、過去の栄光等は見る影もない。
そんな穀潰しで、無能、くそったれで無責任。
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