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(成人の儀を済ませたら、すぐにでもこのエバンズ家に婿入りしてくれる方を見つけて貰わなきゃ)
「そんな風な言動やめて頂戴。私は確かに家を空けていて、貴女への関心が足りないように見えるかもしれないけれど。全てはこの家のためで、将来の貴女のためなのよ?」
「そうですね、ですからもう機嫌取りのように贈り物を寄越さなくても結構ですよ?」
(そしたらこの女にはさっさと夫人の座から退いて貰って。後は大好きな慈善活動でも何でも飛び回っていたら良いわ。何処か小さな屋敷でも買ってね……)
「だからって、あのような金額を子供の貴女が使うだなんて」
まだ言っている。
ソフィアはもう眼前の人間に興味すら失っていた。
そんな箇所ばかりよく見ている。
しかも自分の仕事を放棄しておきながら、口出しだけは一丁前なのだから心底呆れてしまう。
「支出と大きな金額だけに目をやっているのならば、お母様のパフォーマンスのような寄付額はどのように説明なさるおつもりですか?」
「ソフィア!」
大人のする事に口を挟むな、と言いたげに顔を真っ赤にして叫ぶ夫人に、尚も冷めたままあけすけに続ける。
「オークションでもあるまいし、賞賛の声でも競り落としてらっしゃるのですか? 聖母様も色々と気苦労が絶えませんのね」
「なんてことをっ! 孤児院の子供たちは皆純粋で良い子たちばかりよ、それなのに……っ」
「はっ……それなのに、なんです?」
ぐっ、と黙り込んだ女の言いたいことなど、ソフィアには手に取るように分かってしまう。
思い通りの反応を見せる子供だけが良い子なのだろう、聞き分け良く常に貴女へ感謝の言葉を繰り返す人形を並べておきたいのだろう。
仕方のない人だと、もはや姿を視界から消すようにまた窓の方を向いた。
(エマお姉様にご挨拶して、たっぷりと甘えたら帰ってしまおう……二人は今頃どうしているかしら)
未だ何かを訴えていたがソフィアは無言のまま、馬車はタウンハウスの前へと着いたのだった。
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