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そう遠くもない距離を移動しついに食堂に到着する。
ほんとはついて欲しくなかったけど……!
致し方なし……
「…龍矢、気配消してくださいね。目立たないようにこっそり入ります。」
「おう。」
ゆっくりと扉を開ける。扉付近の生徒は気づいたようで龍矢を見て黄色い悲鳴を上げかけたが俺は人差し指を口に当てにっこりと微笑みかける。京曰くこれは効果的らしいのだが……
「わ、和泉様が食堂に…!?」
「あぁ今日もかっこいい……ッ」
「抱いて…ッ」
「ね、もしかしてあの方が噂の…?」
「か、霞様……ッ」
原理はよく分からないが確かに生徒達は声を抑えてくれた。
よし、第一関門は突破。何とかバレずに入ることが出来たようだ。
「あぁ、また会えましたね…!私の日向!」
「ん…?おぉ、玲夜か!ってどうしたんだ?急に抱きついて!」
遠くの方で悲鳴が聞こえると思ったら非常にお綺麗な先輩が王道くんに抱きついていた。
食堂中の視線がそこに釘付けな為、無事注文を終えて騒ぎの中からは死角の席につく。
遠くの席はこれまた同じ我関せず系の生徒が陣取っている為少し近いもののまぁほとんどの人が向こうに集中して気づいていないし大丈夫でしょ。
「何あのマリモ!!綾小路様が穢れる!!」
「副会長様ぁぁぁ!!!!」
「何であんな不潔な不細工が…ッ!」
「…俺は耳栓しとくぞ」
どうやらあの綺麗な人は生徒会副会長様らしい。
親衛隊のチワワ達が絶望の悲鳴をあげている為耳が非常に痛い。
龍矢は早々に耳栓をつけ頼んだ料理を食べ始めている。
俺は顔布がある為スムージーです。ダイエット中のOLかよ。あぁ坦々麺、美味しそう。
「ちょ、待ってよ〜レイレイ!もしかしてその子がレイレイの言ってたお気に入りクン?わぁ〜初めましてぇ、俺は会計の倉橋圭人だよ〜」
「……い、ぬ……ま…ど……しょ、き」
「あの玲クンを手懐けるなんてすごーい!
僕は双葉空!陸の双子の兄だよ!」
「僕は双葉陸!空の双子の弟だよ!」
「「僕達は庶務!よろしくねー!」」
おぉ、急に人が増えて自己紹介が始まった。
見るに生徒会が大集合らしい。興味が無さすぎて今初めて全員を拝んだ上名前も初めて知った。まぁ書記は聞こえなかったけど。
そう、学園のアイドル且つトップの生徒会の名前と顔を2年目で。仕方ないだろ、興味ないし近づきたくないんだから!!
「そうか!俺は日向だ!よろしくな!!で、お前はなんて名前なんだ?」
「ほう、俺の名前を知らないとは外部の下民か。いいだろう、特別に名乗ってやる。俺は生徒会長、桐生院柊斗(しゅうと)だ。その低俗な脳に刻みつけておけ」
うっっわぁ、俺様生徒会長きたーーーー
確かこの言い方に怒った王道くんが気に入られるんだよな
「何だよそれ!おかしいだろ!ここでは皆平等なんだろ?そんな言い方してたら友達出来ないぞ!!」
「ふふ…ははははっ!!俺様に説教の挙句友達が出来ない、か!気に入ったぞ、おい、お前俺のモンになれ」
え、もしかしてこの後の流れもマジでやんの??え、キスすんの?嘘だろ??
「おい…急にどうした」
「いえ別に……というかそろそろ出ませんか?」
「は?っておい……」
そうこうしているうちに会長は面白そうに笑うと王道くんの顎に手をかけ……
「んぅ!?」
キスしたよ!!!!!
逃げ遅れてバッッチリ見ちゃったよ!!
別に偏見ないとは言ったものの男同士の乳くりあいを眼前で見るのはきっっっつい
「な、何するんだよ!!」
袖でゴシゴシと口を拭い困惑する王道くん。
「ほう…普通は俺様からのキスは喜ぶんだがな。増々気に入った。」
「ちょっと柊斗!私の日向に何をするんです!見つけたのは私です、貴方には渡しませんからね!!」
バチバチの会長と副会長に大絶叫のチワワ達。
そしてどこからか………視線。
ふと目が合った。あの位置は書記の……ってえ?あれって……
一気に顔が青ざめる。雑面で顔を隠したところで意味がない。1番バレてはいけない人にバレた。まさか彼奴がここにいるなんて
「りゅ、龍矢…!逃げますよ!」
「は!?ちょ、おい!珠羽流!!」
一目散に逃げる俺。それを追う龍矢。
そして……猛スピードでこちらに駆けてくるのは書記。
やばい……追いつかれる……!
「は…ぁ…、つか、まえ…た」
「……下ろして頂けませんか。書記様…」
「や、だ。な…で、ここ…に…?」
「……人違いでございませんか?とにかく、下ろしてくださいませ。何卒、ご容赦を」
「……じゃ、むこ…う、いこ…?」
ようやく腕の中から解放されたかと思えば軽々と抱き上げられる。
俺下ろせって言ったよね!?絶対目立ってるよこれ!?
案の定周りを見渡すとほぼ全ての視線を集めていた。
「……和(まどか)。急にどうした、そして誰だそいつは。」
「わぁ、もしかしてまどちんのイイコ?僕達にも紹介してよ〜!」
「だ、め。じゃ…あ」
和は俺を抱き抱えたままスタスタと食堂を出ると少し先の空き教室に入った。
「で…なんでここに、いるのですか。…珠羽流様…」
「…さっきより流暢になってますよ、話し方。」
「珠羽流様、だから…緊張、しない。…で、なぜ…?」
「…外部生として入学してきました。今は朝比奈珠羽流ではなく霧矢珠羽流です。…それにしてもまさか和がいるとは…」
目の前の書記改め、戌井和は朝比奈本家に仕える護衛だ。幼い頃から俺に仕えているが中学から寮に入ったらしく久しく会っていない。
あぁちなみに朝比奈というのは俺の本当の苗字で霧矢は偽名。
自分で言うのもなんだけど朝比奈家の権力ってめちゃくちゃ大きい。朝比奈の人間が執事科なんてって言われたら跡継ぎの兄さんにとっても良くないし。何より俺は平和に過ごしたい!!
こっちはわざわざ空気になる術を身につける為に執事科に入ったんだ!…まぁそれだけじゃないけど。
ここに入る為に色々約束もあるし周囲にバレる訳にはいかない。
という訳で明日からの俺の平和の為に今日の俺のすべきことは此奴を黙らせることに決定。
「俺も、驚き…ました。なぜ……翔様に止められた、でしょう?」
あぁ、確かに兄さんにはめちゃくちゃに止められた。何かあってからでは遅い、絶対行かないでくれって。でも……
「あぁ、兄さんなら最終的に折れましたよ」
「相変わらず、弱い……」
兄さんは過保護であり重度のブラコンだから結局俺のお願いは許してくれる。まぁ条件付きだったけど。兄さんを陰で支える為に執事科に行きたい!って言ったら膝から崩れ落ちて泣いてたなぁ……
…はぁ、現実逃避してる場合じゃない。それよりもっと厄介なのが……
「珠羽流様、お仕置。僕達に、黙って…学園、来た。悪い子。」
ぎゅっと後ろから抱きしめられ耳元で囁かれる。こいつ…俺が耳弱いの分かって……
「んッ…い、いや…知らなかった…!あなたがいるなんて…!!」
「余計、だめ。……ずっと、珠羽流様に、会えなかった。今日は、珠羽流様を…堪能する。…邪魔な彼奴、いないし」
「や…っ、ちょっと…!脱がす、なぁ…っ!」
ネクタイを奪われ手を拘束される。
シャツのボタンも1つずつ外されていく。
顔にかかる雑面も奪われてしまった
「だめ…っ!こら、まど、か…!あっ…んん…」
朝比奈家に生まれた子は基本的に弱点を見せてはいけない。襲われるなんて以ての外だ。
快感に慣れる為の訓練を幼い頃から施されているもののこんなの慣れる訳がない。
「ここ、も…変わらず、弱い?」
記憶より遥かに大きい和の手が胸板を撫で飾りを摘む。
「んんんッ!?や、やめ…なさ…まどか…!!」
「ん…残念、だけど…ここまで。これ以上は、遥に、怒られる…」
「え、は…遥もここに…??いや、双子なんだから当然か…?」
「ん、遥…風紀、執行部長…」
風紀執行部長!?まさか遥がそんな地位に…いや、まぁ、軽々と想像出来るけど…
どうやら和の双子の弟、戌井遥もこの学校に、しかも風紀委員長になっているらしい。
和1人でも厄介なのに遥まで……
「そろそろ、行かなきゃ。…そういえば、珠羽流様、敬語外れてる。可愛い…」
「お、お黙りなさい!和!……それと、生徒会には私のことは人違いだったと伝えてください。私はこの学園で、平穏に!安らかに!!過ごしたい!!…………俺の言うこと聞けるよね?和。」
「もちろんで、ございます。…と言いたい所ですが、皆の前で珠羽流様、連れてっちゃったから……多分、生徒会…こっち来てる。鉢合わせるかも……」
「あ………」
俺の平穏は少し遠くなったかもしれない
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