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roll1:前嶋 若菜
「うぅ...なんでよ」
四方を壁に囲まれた用を足すための狭い空間、それすなわちトイレ。
なぜ私がトイレに籠って涙を流す羽目になったのかというと、4時間前に遡る。
私は前嶋若菜 29歳
トクマルグループという食品メーカーに勤務している
今日もいつも通りに出勤し、朝礼の真っ最中。
うちの朝礼は業務連絡から始まり
部長の"それでは張り切っていきましょう"という
締めの一言で終わるのがお決まりだ
「それでは張り切って...いく前に今日は杉本から報告があるそうだ、出てこい」
すると同期の杉本良太と後輩の新川美桜が2人で前に出てきた
「えー私事ですがこの度、新川さんと結婚することになりました」
ーーえ?
良太が発した結婚という二文字が頭の中でこだましている
ただ単に片想いの相手が結婚して失恋した?
いいや、ちがう。
私と良太は付き合っていた、、はずだった。
付き合って約2年、私も来月で30歳になる
そろそろプロポーズされるかも
なんて期待していた矢先こんなことになるなんて
「前嶋さん同期ですよね!なんか知ってました〜?」
社内が祝福ムードの中でたった1人状況を理解できず唖然としていた私に隣の席の同僚がなんの気なしに話しかける
まぁ、そりゃそうだよね
だって私と良太が付き合ってたなんて誰も知らないんだから。
ゆっくりしたいからって会う時はいつも私の家
外でデートなんてしたことはなかったし
仕事とプライベートは分けたいから会社のみんなには付き合っていることは秘密にしておこうって言われてた。
何かおかしいってことくらい冷静に考えてみればわかったはずなのに
気づかないふりをするくらいに良太が好きで、
ずっと一緒にいたいなんて思ってたのは私だけだったんだ。
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