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 寒く厳しい冬が終わり、春の選抜も終わり(遠軽青凌高校は二回戦まで勝ち上がりました)ゴールデンウイークも終わるとオホーツクに花の季節がやってくる。  オホーツク花めぐりといえば、滝上町や小清水町の芝桜、遠軽町のコスモス、そして我らが湧別町のチューリップ公園だ。  オホーツク鉄道では毎年、チューリップが満開の時期に開成駅から上湧別駅の間に観光展望列車を走らせている。俺も観光ポスターの撮影の為に現地に行ったことがあるのだが、前も後も右も左も満開のチューリップ畑の真ん中を、一両編成の気動車がコトコト走っている光景は、人間用語でいうところの「ばえる」こと受け合いである。  俺が生まれるはるか以前に亡くなった――もとい廃線となった勇網線はサロマ湖畔を走り、それはそれは風光明美な車窓であったそうだから、生き残っていればオホーツク鉄道と合わせて観光路線として売り出せたのではなかろうか。などと思っていたら、湧網線の代替バスさえも今年の春のダイヤ改正で廃止になった。やはり無謀な夢であったらしい。  ゴールデンウイークから夏休みまでの間は、北海道の短い観光シーズンである。  我らがオホーツク鉄道も俺をチューリップの中に連れて行ったり、駅長ルックの俺に北海道新聞の取材を受けさせたり、観光客の誘い込みに余念がない。  この努力が実を結ぶかは甚だ疑問だが、こんな地方ローカル線でも一応、努力だけはしているのだ。  そんなある日、オホーツク鉄道本社に一本の電話が入った。  ――十二時四十九分遠軽発、紋別行普通列車に爆弾をしかけたと。
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