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◆◆◆
彼に連れられて来たところはとても大きな神社で、その中にある建物だった。
豪華だ。和も洋もデザインされていてどこぞの貴族の家のようだ。
「軍長。入るぞ」
彼がノックもせずにドアを開ける。
さすがにそれは…と思う間もなくドアの向こうから女の人の声がした。
「おい、山姥切国広。我が主の執務室に入るときはノックしろと言っただろう」
「すまない。国広」
「ったく…。あのなぁ私のことは軍長補佐と呼べ」
「兄妹なんだからいいじゃないか」
「私は本物の堀川国広か分からない。少なくともあなたを兄だと思ったことはない」
山姥切国広と呼ばれた彼はわたしそっちのけで部屋の中にいる女性と話している。
…彼とあの女の人は兄妹なのかな?
それにしても仲悪そうだなあ。
彼はまあどっちかというと仲良くやりたさそうだけど。
「で、山姥切国広。用件は?」
「ああ。忘れるとこだった」
え?!わたし忘れられるとこだったんですか?!
ちょっとそれはカナシイデスナ…
「この女、王宮大社内遥拝所近くでウロウロしていた。巫女服を着ていないし、王宮のメイドや侍女などではなさそうなんでとりあえず連れてきた」
「……要するに“面倒事に巻き込まれそうだから後はまかせた”ということか?」
「ああ。後は頼んだ」
そして、彼は去ってしまった。
…うん。わたし、あの人に面倒だと思われてたんだね。
ちょっっっっと傷ついたなぁ。
「はぁ…。すまない。あいつはあれで人見知りなんだ。でも、決して君のことは嫌ってないだろう」
あ、そうなんだ。なら良かった。
女の人はわたしの前へ歩み、
「…で、君は誰だい?」
ですよね。
まあ、突然現れた謎の女学生ですから、そうなりますよね。
ここはキチンと自己紹介を。
「わたしは神隠 宮美です。高知に住んでいます。あなたは?」
「私は堀川国広だ」
ほりかわくにひろ…。女なのに男っぽい名前だな。
「さて、今は我が主がいないため、勝手なことは出来ないが、お茶でもだそう。薬研!」
と堀川さんが誰かを呼ぶと、
なんと、忍者のようにどこからともなく一人の少年が現れた。
…え?わたし、過去にタイムスリップした?
それとも忍者がいる異世界に転移した?
「なんだ。堀川国広」
「お茶をだせ」
「俺はあんたの刀じゃない」
「分かっている」
「だったらいちいち指示するな」
「しかし、客人が来たらもてなすのは戦国時代からの礼儀だろう?あいにく私はお茶を淹れるのが下手でね」
「チッ」
舌打ちをして少年は消えていった。
今、わたしの目の前ですごいこと起きたよ。
堀川さんが少年をよんで、少年は忍者みたいに現れて、また忍者みたいに消えていったよ。
「怖がらせたようかな?」
「あ、いえ…。忍者みたいだなって…」
「フフッ。まあ、ある意味あいつはそうだな。彼の一派、粟田口は他の連中より一味違う」
…なるほど分からん。
イッパ?アワタグチ?
とにかくすごいことは分かった。
「まあ、立っていては話がしにくい。こちらに座ってくれ」
堀川さんはわたしを部屋の中央まで案内してくれた。
部屋にはたくさんの本棚、壁には何かの表彰、一番奥には大きな机があった。
わたしは部屋の中央にあるフッカフカのソファーに座ると、向かい側に堀川さんも座った。
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