心の鉛

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「いやいや、野良猫を見つけるのが速いことも立派な才能だよ!あまりにも速いからさ、私いつも驚くもん。きっと目の瞬発力が人よりも良いんだよ!」 あまりに真剣に結奈がそう言うものだから、堪らず私は腹をかかえて笑った。 それと同時に、私の心に降り積もっていた黒く重い鉛のような感情が、じわじわと溶けていくのを感じる。  この時、私はやっと分かった。 確かに他人の言葉により傷付くことはたくさんある。 言われたことを引きずって、自分自身を責めたり自信を失ってしまうことも多い気がする。 けれど、他人からの言葉によって心に降り積もってしまった劣等感という鉛を、優しく溶かしてくれるのもまた、他人からの言葉なのだ。 そしてーーーー 「あ!あともう一つ!」
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