心の鉛

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 そんな時、その感情に名前があることを私は知った。 「本城(ほんじょう)さんと伊瀬(いせ)くん、付き合ったらしいよ」 「えっ!?…そ、そうなんだぁ」 密かに想いを寄せていた伊瀬くんが選んだのは、学年のマドンナ的存在である本城さん。 本城さんはとても可愛い。 二重瞼の大きな瞳に、筋の通った丸い鼻。赤くぽってりとした唇にサラサラの髪。 私にないものを全て持っている本城さんは、確かにとても可愛い。……けど、 「でっ…でもさ、本城さんて性格キツイよね。前に私も廊下ですれ違った時に、悪口を言われたし……」 ″そんな人を選ぶだなんて、伊瀬くんも見る目ないよね”って。そんな風に友達と愚痴を言い合いたい。それだけの思いで放った一言だった。
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