心の鉛

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「まぁでもさぁ、本城さん可愛いもん。あれだけ可愛かったら私たちなんて敵いっこないよ。沙雪も伊瀬くんに憧れていた気持ちは分かるけど、変な嫉妬はしない方がいいよー!」 いつも私と同じように「伊瀬くんてかっこいいよね」と語っていた友達の結奈(ゆいな)は、そう声をあげてケタケタと笑った。 そりゃあ結奈の伊瀬くんへの気持ちは、ただの″憧れ”に過ぎなかったかもしれないけれど……。 廊下では仲睦まじげに、伊瀬くんと本城さんが身を寄せ話をしている。 その光景を見て胸が痛むのと同時に、またあのどす黒く、鉛のような感情が私の中に降り積もっていった。 ーーーー本城さんなんて、顔がちょっと可愛いだけなのに。 そう思い奥歯を噛みしめた瞬間、私はハッとし気が付いた。 何も食べていないのに、口の中が苦く感じる。 私の中に溶けることなく降り積もっていく、この重たい感情。 これは全て『劣等感』の(かたまり)なんだ。
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